内閣支持率が回復傾向にあることも安倍首相を強気にさせている。今後、野党の追及を受けて多少の支持率低下を招いたとしても、政権の要を維持するほうが得策とみているのだ。

 24日投開票の米軍普天間基地がある沖縄県宜野湾市長選で、政権が支援した現職の佐喜真淳氏が再選したことも、政権への批判を和らげるプラス材料と受け止めている。

 だが、安倍首相の思惑通りに事が運ぶのかは見通せない。政府・与党内では甘利氏の調査報告を待って去就を巡る論議が進む見込み。政府関係者は「甘利大臣に不利な新たな事実がマスコミから出てきたり、野党の調査で明らかになったら、アウトだ」と危惧する。

公明党の出方が焦点に

 連立パートナーの公明党の出方も焦点となりそうだ。公明幹部は現時点では「甘利さんを交代させるリスクの方が大きい」と今後の推移を注視する構え。だが、政治とカネの問題は公明の支持層の関心が強いテーマだ。

 「事態がさらに深刻化するようだと、参院選への影響を懸念する公明も甘利さんの更迭を求めるはず。選挙協力を取引材料にされるので、安倍首相もかばいきれなくなるだろう」。自民の閣僚経験者はこうした見方を示す。

 悪いことは重なるもの。年明け以降の金融市場の混乱で円高・株安傾向が鮮明になり、アベノミクスの先行きに不透明感が漂ってきたことも政権にダメージを与えつつある。

 市場関係者の間では、甘利氏の疑惑が政策運営への不安要素となり、株価乱高下の一因になっているとの見方も出ている。

 日本は今年の主要7カ国(G7)の議長国だ。「強い経済」と、安定した政権基盤を背景に、5月末の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でリーダーシップを発揮し、世界経済の安定化などへ結束して取り組む姿勢をアピールする。その勢いのまま、参院選になだれ込む――。安倍首相のこんな基本戦略が揺らぎつつある。

 すべては甘利氏の調査結果次第だが、野党の追及をかわせそうと判断した場合でも、甘利氏や政権側が丁寧に説明責任を果たす必要があるのは言うまでもない。

 政治とカネを巡る問題は、「古い自民党」のイメージそのものだ。1つのつまずきが国民の不信感を呼び起こせば、安倍首相が実績として誇る経済・外交面の成果など、あっという間に吹き飛んでしまいかねないのだ。

 「築城3年、落城1日。政府には常に国民の厳しい目が注がれている」

 安倍首相は今年の年頭所感でこう強調している。政権中枢を直撃した今回の危機をどう収束に向かわせるのか。世論の動向を見据えた安倍首相の政治判断が注目される。