
1月21日発売の週刊文春が報じた甘利明経済財政・再生相の金銭授受疑惑が安倍晋三政権を大きく揺さぶっている。今週から審議が本格化する予定の2016年度予算案や、甘利氏が答弁を担当するTPP(環太平洋経済連携協定)関連法案審議への影響が必至のため、政府・与党内に懸念が広がっている。
予算案・TPP審議への影響は必至
週刊文春によると、千葉県の建設会社が2013年に道路建設をめぐる都市再生機構(UR)との補償交渉で甘利氏側に口利きを依頼。見返りに総額1200万円を現金や接待で甘利氏側に提供したとしている。
「法に違反する行為はしていない。職責を全うする」。記者会見などでこう強調した甘利氏は世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に予定通り出席。今週中に会見を開いて調査結果を説明する意向を表明した。
降って湧いた敵失に活気づく野党は甘利氏の説明や独自調査などを踏まえ、疑惑を厳しく追及する方針だ。与党は今月29日から衆院予算委員会で2016年度予算案の実質審議を予定しているが、野党は甘利氏の対応次第では予算案の審議日程の引き延ばしも辞さない構えだ。
突然の「甘利ショック」に政府・与党幹部は頭を抱えている。今国会の会期は6月1日までだが、夏に参院選を控え大幅な延長は困難だ。
ただでさえ、政府は国会への提出を戦後最少の55法案に絞り込んでいる。予算審議が遅れれば、法案審議をさらに減らさざるを得なくなりそうなのだ。
特に影響が懸念されるのが、TPP関連法案だ。政府・与党は2016年度予算案が成立した後の4月以降、TPP協定案の承認と、農業対策を盛り込んだ関連法案の成立を急ぐシナリオを描いていた。参院選でカギを握る地方の1人区対策として農業重視の姿勢を一刻も早くアピールするためだ。
甘利氏は協定交渉の当事者で、自他ともに認める国会答弁の中心人物。だが、疑惑を十分に説明し切れないまま甘利氏が答弁に立てば、審議の停滞は必至だ。
TPP承認や関連法案の成立が大きくずれ込む事態となれば、参院選への影響も出かねず、安倍政権にとって痛手になる。自民のベテラン議員は「甘利さんでは国会審議はもたない。早く辞めた方がいい」と厳しい見方を示す。
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