LIDARを開発するために必要だった技術は、パイオニアが2014年に事実上の撤退をした家庭用AV(音響・映像)事業で培われたものだ。自動運転事業開発部の村松英治部長は「一つひとつの技術は他社も持っているかも知れないが、自動車業界で全ての技術を網羅している企業は多くない」と、技術力に自信を示す。

 パイオニアは2017年に自動車メーカーに提供する小型LIDARのサンプルを完成させており、2020年にも1台1万円以下で小型のLIDARを量産する体制を整えるものとみられる。

2017年9月に発表したLIDARのサンプル(出所:パイオニア)

周辺の整備が鍵をにぎる

 祖業のオーディオ事業から事実上の撤退したパイオニアの業績は芳しくない。2017年3月期通期の売上高は3866億円と、15年3月期の5016億円から20%以上減少。構造改革費を計上したため、17年3月期の純利益は50億円の赤字だった。業績の立て直しが急がれる現状から、LIDARなどの新事業はしっかりと成長させなければならない。

 パイオニアがLIDARの開発に着手した後から、自動車業界では「自動運転車にはLIDARが必要」という認識が急速に広がっている。例えばドイツAudi(アウディ)は、2018年に旗艦セダン「A8」にLIDARを搭載して限定的な自動運転機能を実現するとする。米ゼネラル・モーターズ(GM)も2017年10月にLIDARを開発するベンチャー企業の米ストローブを買収したと発表。LIDARの小型化とコスト削減を買収の目的として説明している。

 こうした背景から、パイオニアのLIDAR開発に注目が集まっている。自動運転車が広く普及した将来に高いシェアが獲得できれば、業績への大きな貢献が期待できる。

 パイオニアは2020年にも日本で実用化すると見られる自動運転車でシェアを獲得できるのか。その鍵をにぎるのは、LIDARそのものよりも周辺のソフトウエアや協業関係ではないかと記者は見ている。

 村松部長が話すとおり、小型で安価なLIDARを開発できる技術を全て持っている企業は少ない。しかし一つひとつの技術そのものは新しいものではないため、時間をかければ競合企業が同様のセンサーを開発する可能性は十分にあるからだ。

 パイオニアの優位性は、既に開発を始めている先行性にある。競合企業が後から同様の製品を開発してもシェアを奪われないようにするためには、自動運転のシステムと自社のLIDARを結びつけ、パイオニアのLIDARを使うことが自動運転車の開発をしやすくする環境を整えることではないだろうか。

 日本では2018年中にも高速道路の高精度地図の整備が終わり、自動車業界の関係者は「2020年の東京五輪までの自動運転車の実用化を目指し、すぐにでも本格的に自動運転車の開発が始まる」と話す。

 2018年1月1日に創業80周年を迎えたパイオニア。祖業から撤退した同社の新事業が花開くかは、間もなく実用化する自動運転車を見れば分かるかもしれない。