高まるか、ヒト・モノ・カネの流動性

 日本でも、10億円規模の資金調達に成功したフィンテックベンチャーはあるし、宇宙分野では2016年12月、衛星を使って流れ星を人工的に作り出そうと取り組むベンチャー、ALE(東京都港区)が個人投資家から約7億円の資金を調達するのに成功。JAXAの元エンジニアがベンチャー企業を起こし、衛星データを使った漁業の効率化に挑むような事例も登場した。

 だがこうした動きは一部に留まる。専門知識とビジネスのノウハウを合わせ持った数少ない人材と、リスクマネーを供給できる一部の投資家に支えられているのが現実だ。

 そもそも、ベンチャー企業を立ち上げたり、これに投資したりする流れが日本でできたのはつい最近のこと。「成功した起業家が、新たな産業や起業家を育てるような循環を何回も繰り返している米国とは土壌が違う」(スマホベンチャー出身の個人投資家)。この循環は一度回りだせば雪だるま式に大きくなるが、最初に重い歯車を動かすのが容易ではない。

 とはいえ悲観ばかりもしていられない。ヒト・モノ・カネ、それに技術が将来有望な産業に集まらないがゆえに、日本が数々の成長機会を見逃してきたとすれば、何とももったいない話だ。

 好循環を生み出す特効薬はないにしても、少しずつ流動性を高める施策は出てきていると思う。たとえば昨年末にガイドライン案が示された同一労働同一賃金を巡る議論や、長時間労働の是正の動きだ。働き方改革が進み、正規非正規の格差がなくなれば転職のハードルが下がり、労働市場の流動性が高まるかもしれない。これに正社員の副業や兼業を原則容認する動きが加われば、新しい領域に人が集まりやすくなるだろう。

 少しずつでもヒト・モノ・カネの流動性を高めて好循環を生む歯車を回していくことが重要なのだろう。