「『モスチーズバーガー』って、こんなにきれいだったっけ?」

 ここ1~2年、「モスバーガー」でハンバーガーを注文して手元に届くと、そう感じることが多くなった。バーガーの具材がきれいにパンにはさまれ、見た目がきちんとしている。紙に包まれている様子も、なんとなく上品だ。前はもっと、雑然としていた気がする。

 一口、二口を食べ進んでも、バーガーの形があまり崩れない。かといって、中のタマネギがたっぷり入ったミートソースが減ったようには感じられない。食べごたえのあるいつものモスだ。

 学生時代、「モスは好きな男子とは行かないようにしよう」と思っていた。バーガーをほおばるのが大変だし、四苦八苦して食べる様子を好きな人には見られたくないから。でも今だったら堂々と食べられそうだ。

 記者は、日経ビジネス1月19日号の企業研究の取材を通して、このハンバーガーの小さな変化に理由があることを知った。

値上げを機に、作り方を改めて勉強

 時をさかのぼって2015年5月、モスバーガーは定番商品を約10%、値上げした。定番のモスバーガーは340円から370円になった。食材の原料費や人件費、物流費などのコスト上昇に対応するためだ。当時は、外食のちょい高ブームにも陰りが見え始め、価格に敏感な消費者がじわりと現れていた頃で、単純値上げでは客離れが起きるリスクをはらんでいた。

 また、前年の2014年後半は、ハンバーガーチェーン最大手「マクドナルド」が、鶏肉の仕入れ先による期限切れ問題や異物混入騒動に見舞われ、ファミリー客を中心にモスバーガーに客が流れてくる動きもあった。値上げはこれに水を差しかねない。

 そんな中でモスバーガーがとった施策は、極めてシンプルで、基本を見つめ直すことだった。具体的には、ハンバーガーの上手な調理の仕方や紙の包み方に至るまでの手順を、すべてのスタッフで確認して、徹底するため、全国各地の店で「製造勉強会」を開いたという。その回数は450回を超えた。

 モスバーガーには調理のマニュアルはあるが、最低限のもの。おいしそうに見えたり、きれいに包んだりするコツまでは書かれていない。勉強会ではそこまで伝えて、お客に商品のよさを改めて知ってもらうように努めた。

 「製造勉強会は、私たち従業員に大きな効果がありました。商品の良さを自分たち自身でそしゃくしたことで、改めてハンバーガーを売っていこうという雰囲気に変わりました」。モスバーガーを展開するモスフードサービス人材開発部教育グループの濱崎真一郎グループリーダーは笑顔でこう話していた。

 こうした地道な取り組みが奏功して、2015年度の既存店の客数は、前年度比2.8%減にとどまった。全店売上高の前年度からの伸び率は、日本フードサービス協会が発表する業界平均を上回る水準で着地した。引き続き業績は堅調で、2016年度は2期連続の増収増益を見込む。