昨年の12月14日、米連邦通信委員会(FCC)は、「ネットワークの中立性(ネット中立性)」に関する原則を撤廃すると決めた。

 ネット中立性とは、「インターネット上のデータは全て公平に扱われるべき」という考えを指す。この原則の撤廃により、通信会社やネット接続会社は特定サイトへのアクセスを高速化するような施策を取りつつ、一方で、別のサイト、コンテンツ向けの通信を遮断したり、アクセスの速度を遅くしたりできるようになる。

 つまり、通信会社やネット接続会社はコンテンツをネットで公開している人や業者(コンテンプロバイダー)を「えこひいき」できるようになるわけだ。

ネット中立性の原則について撤廃を発表する米連邦通信委員会のアジット・パイ委員長(写真:AP/アフロ)

 中立的なネットの世界では、資本や事業の規模が小さなコンテンツプロバイダーやベンチャー企業でも、消費者が気に入るコンテンツを作ることさえできればアクセスを大規模に集めて収益を拡大できた。そこで成長したのが、グーグルやアマゾン、そしてフェイスブックといった米ネット業界の巨人だ。一方、こうした「巨人サイト」向けの通信量が急増し、設備投資負担が重くのしかかっていた通信会社からは中立性の原則に対して不満の声が出ていた。

 ネット大手は撤廃に対し反発している。たとえばフェイスブックのシェリル・サンドバーグCOO(最高経営責任者)は12月14日、同社サイト上で、「今回のFCCの決定は有害で失望している」とコメントした。

フェイスブックが直面した「ネット中立性」の罠

 もっとも、フェイスブックは一昨年、ネット中立性を侵害しているとして、ある非営利のプロジェクト展開をインド当局から禁止された皮肉な経験を持つ。

 同社は世界中にネットを普及させることを目指して「internet.org」という団体を立ち上げ、新興国の通信会社と組み、同社サイトやネット百科事典ウィキペディアなど特定サイトに無料でアクセスできるようにするアプリ「Free Basics」を手がけている。Internet.orgのサイトによれば、この活動により「2500万以上の人々がインターネットに接続できるようになり、その優れた価値を体験できるように」なったという。