ロビーをすることは「恥」なのか?

 彼女はトランプ氏が大統領選を戦っていた時、彼のスピーチのゴーストライターを務めていた人物だ。取材中も言葉(ワード)の選び方が秀逸で、それだけでも書き手としての能力の高さがうかがえた。

 話が「なぜ米国でロビー活動が普及したか」について及ぶと、彼女は思い立ったようにこんな話を始めた。

 「あたながもしアメリカで街行く人に『ロビイストのことをどう思う?』と聞いたら、きっとこんな反応が返ってくるでしょう。『(眉間にしわを寄せて)ウーム』」

 ネガティブなイメージを持たれているということだ。同様のイメージを持たれている職業として彼女は、「自動車の営業マン」「弁護士」「政治家」を挙げた(これらの職業そのものが悪いわけではなく、あくまで一般人の持つイメージだ)。

 日本でも、ロビー活動と聞くと、「どうせ政治家と癒着して自社の利益のためにズルしてるんでしょう?」と受け取られがちだ。同じような風潮がロビー先進国として知られる米国にもあるようだった。

 「でもね」。彼女は、これだけは言わせてほしいとばかりに語気を強めた。

 「私はロビイストという職業に誇りを持っているの」

米国からロビーがなくならない理由

 そこで彼女が持ち出したのが「First Amendment(アメリカ合衆国憲法修正第1条)」だった。1791年に採択された憲法修正(権利章典)に出てくる最初の条項で、米国議会に「宗教の自由」「表現の自由」「報道の自由」「平和的集会の権利」「政府へ懇願する権利(請願権)」を妨げる法律の制定を禁じている。記者も米国の大学でジャーナリズムを専攻していた時に授業で習ってから、大好きになった法律だ。彼女は言った。

 「この何年もロビイストのスキャンダルばかりが報道されて、すっかり『卑怯な人たち』のイメージが付いてしまった。(あえて個人名は言わずに)現行の大統領も選挙戦の間は特に、ロビイストをあたかもワシントンの悪の象徴であるかのように言ってきた。個人的には、必要以上にロビイストという職業が汚されているように感じています」

 そんな彼のゴーストライターをしていたのだから、さぞ心の葛藤があっただろう。彼女は一気に続けた。

 「でも、それは本当のロビイストの姿ではない。本来はFirst Amendmentに保証されている基本的人権を守る専門職なんです。請願権は、アメリカのデモクラシー(民主主義)を構成する重要な要素。私が言うとちょっと偏った意見になってしまうけれど、強く信じているのは、私たちのFirst Amendmentの一部である以上、請願権(right to petition)が無くなることはこれからも絶対にないということなんです」

 「請願のやり方は、時代と共に変わるかもしれない。でも、権利そのものはあり続ける。決して消えることはありません」

 同じ言葉を繰り返しながら懸命に訴える彼女を見ていて、目頭が熱くなってしまった。