よそから来た若者に大きな裁量を与えることについては、当初は地域社会の反発もあった。しかし活動を続けるうちに現地のネットワークや派生団体が広がり、移住者を受け入れやすい環境が整ってきた。これまでに関わった協力隊員の一部は任期後に現地で起業したほか、都市部に戻って大企業やベンチャ―企業で活躍するケースも多い。協力隊の任期後に東京で建築の実務を学び、再び津和野町に戻って建築関係の仕事を始めた人もいるという。

 これといった営業活動はしていないが、評判を聞いた全国の自治体から依頼が舞い込む。しかし、本気で地域を変えたいという思いがトップや担当者から伝わってこない自治体では仕事はしない。

 「地域活性化が上手く進むかどうかは、自治体の体質に大きく左右される。外部にプロジェクトを丸投げしようという考えで、協力隊員の任期後を考慮していない場合は、きちんと断るようにしている」(佐々木氏)

今後は学生向け事業も

 地域に貢献しつつ人を育てるという理念から、地域おこし協力隊以外の事業も模索し始めた。学生が地域社会の課題解決に取り組む教育事業だ。地方での仕事は規模は小さい代わりに、全体像が把握しやすく、特定の関係者さえ協力的なら柔軟に動きやすい。学生でも地域に関わりやすい環境をファウンディングベースが整え、一種の留学プログラムとして提供しようという考えだ。プログラムを通じて、優秀で行動力のある学生と地域社会との関係を作る狙いもある。

 「ファウンディングベースの事業を全国に広めることは、現状では難しいと思う。協働できる自治体をピンポイントで押さえるしかないのが現状だ。しかし、周辺地域から羨ましがられるようなモデルケースを作り、視察などを呼び込めば、本気で地域を変えたいという意識が広まっていくはずだ」(佐々木氏)

 地域おこし協力隊という制度自体、まだ活用が始まったばかりで、多くの自治体が手探りの状態だ。甘い計画で協力隊員を受け入れ、結果的にせっかくの移住希望者を挫折させてしまっては元も子もない。自治体と移住者の双方の視点を持ち、間に立てる人や組織の存在が、地域活性化の鍵を握るのは間違いない。