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 年始、久々に地元である栃木県那須町に帰省すると、小さなチョコレート専門店がオープンしていた。カカオ豆を自家焙煎して手作りする名物の板チョコレートは750円以上と高価だが、地域での評判は高く、贈り物としても好まれているという。記者の両親も例に漏れず、贈答用の詰め合わせを喜々として渡してきた。同店の店主は東京都出身。にもかかわらず那須町で店を開いたのは、「地域おこし協力隊」の制度があったからだ。

 地域おこし協力隊は総務省が2009年から実施している地域活性化策のひとつ。地方に移住して自治体や地域の仕事に携わる人に、月15万円ほどの生活費が支払われる。協力隊員の活動内容を詳細に決めて募集している自治体もあれば、隊員の自主性に任せる自治体もある。初年度は隊員89人、実施自治体31という規模でスタートした同制度だが、2017年には隊員4830人に増え、997の自治体に広がった。自分の望む働き方や環境に合った自治体が見つかれば、地方で仕事を立ち上げたい人にとっては助走期間を支えてくれるありがたい制度だ。

 しかし、実態はそう甘い話ではないようだ。

 「地域おこし協力隊とひとくちに言っても、実態は様々。自治体によっては、協力隊員を3年間の任期にわたって使い倒し、任期後は支援もなく野に放つというケースもある」

 そう語るのは、2014年設立のファウンディングベース(東京・台東)で共同代表を務める佐々木喬志氏。同社の事業は、地域おこし協力隊の力を無駄にせず、使い捨てず、確実に地域活性化につなげるため支援することだ。

自治体と協力隊の間に立つ

 ファウンディングベースが協力する自治体は全国10カ所ほど。たとえば、島根県津和野市では地元⾼校の魅⼒向上のため、地域おこし協⼒隊員が公設の塾の立ち上げ・運営に携わった。その仕事内容を定義し、自治体に代わって人材配置や指導を担当するのがファウンディングベースの役回りだ。また、大分県豊後高田市では協力隊員を社員に迎え入れ、砂浜を活かした観光振興の新規事業を立ち上げるというケースもある。地域おこし協力隊を受け入れる自治体には、隊員の生活費のほかに募集費や事業費が国から支払われる。その一部がファウンディングベースの収益となる。13人の社員のうち、9人が現地に移住して働いている。

ファウンディングベース共同代表の佐々木喬志氏

 「自治体側の『協力隊』担当者は専任ではなく、本来の業務の傍らひとりで数人の協力隊員を管理しなければならない場合も多い。とてもではないが、隊員一人ひとりの活動や任期後の自立を計画する時間や労力を捻出できない。それを代行する組織が必要だ」(佐々木氏)