数少ない例外として、freeeやマネーフォワードが急速に事業を拡大できたのは、両社がお金を直接扱うのではなく、顧客や金融機関などから取得した「お金の流れ」という情報を扱っているからだった。

 仮にフィンテックベンチャーが一歩踏み込んで、「お金」そのものを扱おうとすれば、そこには厚い規制の壁が立ちはだかる。たとえば比較的規制の壁が低いとされる送金サービス一つをとってみても、扱える金額の上限は100万円以下と少額で、10万円を超える場合はその都度、本人確認する必要がある。さらに送金途中で滞留している資金の100%以上の額を資産保全する必要もある。

 そもそも、日本の大手銀行が展開する金融サービスの利便性は高い。ネットバンキングが発達しており、ATMやCD(キャッシュディスペンサー)も全国各地に設置されている。ここで大手銀行に伍して、規制の壁を乗り越えつつ、ベンチャー企業がフィンテックを展開していくのは簡単ではない。米国では10代、20代の「ミレニアル世代」と呼ばれる若者がフィンテックを牽引しているが、少子高齢化が進み、若年層が薄い日本では、こうした若者向けサービスが育ちにくいという課題もある。

好循環、生み出せるか

 2014年から2015年にかけて、米国ではスマホ決済を手掛けるスクエアやネットを介して資金の貸し手と借り手をつなぐレンディングクラブなど、フィンテックベンチャーの上場が相次いだ。一方で、日本のベンチャーが上述のような課題を乗り越えて急成長し、単独で上場していくのは現状では難しいだろう。現実的には、大手金融機関による出資やM&A(合併・買収)が日本のベンチャーにとって当面のゴールになりそうだ。銀行が持ち株会社の傘下にできる子会社は金融業務に限定されているが、この規制を緩和する議論も進んでいる。

 ただ、大手銀が拙速にベンチャー企業のフィンテックサービスを顧客に提供して問題が発生しては、信頼に大きな傷がついてしまう。そこで銀行とベンチャーとの間にある垣根をできるだけ下げる役割を期待されているのがファンドだ。「金融機関は名前も知られていないベンチャーとは付き合いにくい。我々が有望なベンチャーに資金供給することで彼らを『評価』し、銀行との橋渡しをしていきたい」とSBIインベストメントの後藤取締役は話す。

 この仕組みがうまく回り出せば、フィンテックは一時的な「バズワード(流行り言葉)」で終わることなく、継続的な成長が見込める分野になるだろう。フィンテック業界では金融に精通した人材が不足していると言われるが、ベンチャーの成功事例が数多く出ることで、大手金融機関から野望を持った若手人材が飛び出してくる可能性もある。ファンドの動きが活発化する2016年は、この好循環を生み出せるかどうかが決まる、フィンテックにとって重要な年になる。