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 イスラエル中央統計局によると、中国とイスラエルの貿易額は1992年にはわずか5000万ドルだったが、2017年には98億1700万ドル(1兆799億円)になった。約196倍に増加したわけだ。イスラエル経済省のオハド・コーエン外国貿易局長は、「両国の経済関係は今後さらに拡大する」と予測する。

 コーエン氏は、「イスラエルと中国は、お互いの足りないところを補える良いパートナーだ」と考えている。中国は常に新しいテクノロジーを探している。イスラエルはベンチャー企業を多く抱えており、そうした技術を提供できる。たとえば食の安全と農業生産性の向上を目指す中国は、まずトヌーヴァやアダマなど、食料もしくは農業に関連したイスラエル企業を買収した。

 一方、常に新しいマーケットを探しているイスラエル企業にとって、中国企業の資金力、そして同国の市場規模は大きな魅力だ。イスラエル企業にとって、母国の人口は900万人足らずで、市場として小さすぎる。つまりイスラエル人にとって、グローバル化は生き残るための唯一の道なのだ。

イスラエルの「知」の吸収を狙う中国

 イスラエルと中国の交流はビジネスの分野だけではなく、教育や科学の世界でも緊密化している。イスラエル北部のハイファに、1924年に創設されたイスラエル工科大学(テクニオン)がある。テクニオンは、約1万5000人が学ぶ、同国の工学・科学を支える知の殿堂だ。米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)に相当する。

 テクニオンは2017年12月、工学や生命科学の研究機関を置くキャンパスを広東省・汕頭に開設した。正式には「広東テクニオン・イスラエル理工学院(GTIIT)」と呼ばれるこのキャンパスでは、講義や研究活動が英語で行われる。教授陣の60%は、テクニオンが派遣するイスラエル人だ。テクニオンは、2004年にノーベル化学賞を受賞したアーロン・チカノーバー教授をGTIITの副学長として送り込むほどの力の入れようだ。中国人の学生はここで学べば、母国にいながらテクニオンの学位を取得できる。約5000人の中国人学生がここで学んでいる。

 中国がGTIITを招聘した狙いは、イスラエルが誇るイノベーション力を吸収することにある。同校の李剣閣学長は、「我が校はイスラエルが持つ最高の頭脳と技術革新の方法を導入することにより、競争力の高い研究機関になることを目指す。さらに、汕頭にイスラエルのハイテク企業を誘致したい」と述べている。

 GTIIT開校の発端は、香港の富豪・李嘉誠がテクニオンに2013年に1億3000万ドルを寄付したことだった。フォーブス誌は、李の資産を363億ドル(3兆9930億円)と推定している。アジア一の資産家だ。

 テクニオンはGTIITを中国の汕頭大学と共同で開設した。李は汕頭大学の出資者でもある。同氏は開校にあたり、さらに1億5000万ドルを追加的に寄付した。李は合計2億8000万ドルをテクニオンに寄付したわけだ。これはイスラエルの教育機関に対して行われた寄付として、過去最大の金額である。

 イスラエルと中国の学術交流は、GTIIT開校にとどまらない。2012年には、北京の対外経済貿易大学が、イスラエルの経済や技術について学べる学科を新設。また北京の外交学院は履修できる外国語の科目に、ヘブライ語も加えた。

 2014年にはテルアビブ大学と北京の清華大学が、3億ドルを投じて、テルアビブ・キャンパスに大学院生向けの研究センターを開設した。XIN(北京語で「新」)センターと呼ばれる研究機関は、主にナノテクノロジー、水質管理技術、環境保護技術を扱う。またその翌年には、イスラエルのベングリオン大学が、中国の学生がイスラエルについて現地で学ぶことができる講座を開設した。

 さらに2015年には中国の劉延東・国務院副総理(教育・科学技術担当)とイスラエルのアビドール・リーバーマン外務大臣が、「イノベーションに関する協力のための3カ年行動計画」に北京で調印した。このプロジェクトには、清華大学や北京大学など中国の7校と、テクニオン、テルアビブ大学、ワイズマン科学研究所などイスラエルの7大学・研究機関が参加し、基礎研究やイノベーションに関する両国間の協力関係を一層緊密にすることを狙っている。