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イスラエルのネタニヤフ首相と安倍首相が2014年5月に会談。ようやく両国の関係緊密化が緒についた(写真:ロイター/アフロ)

 前回このコラムで、米国やドイツの企業がイスラエルのハイテク・スタートアップ企業に積極的に投資していることをお伝えした。

 筆者が特に興味深く感じているのは、中国がイスラエルに強い関心を寄せていることだ。中国企業のイスラエルへの殺到ぶりは、日本企業の比ではない。

中国企業がイスラエル企業を次々に買収

 イスラエル政府と中国政府が2011年7月に貿易促進や経済協力に関する合意書に調印して以降、まるで水門を開いたかのように、何十億ドルものチャイナ・マネーがイスラエルに流れ込み始めた。

 たとえば2014年には、中国で第2位の食品メーカー光明食品(本社・上海)が25億ドルを払って、イスラエル最大の食品メーカー・トヌーヴァの株式の56%を買い取った。これはイスラエルの食品業界で最大規模の買収である。トヌーヴァの主力製品は牛乳、チーズやヨーグルトなどの乳製品、食肉。この買収の背景には、中国の消費者の間で食の安全への関心が高まっていることがある。

 2016年7月には、国営企業の中国化工集団(ケムチャイナ)がイスラエルの農薬メーカー、アダマを14億ドルで買収。年間売上高33億ドル(約3630億円)のアダマは、除草剤や殺虫剤の分野では世界有数のメーカーで、2015年から中国にも積極的に進出していた。

 さらに2016年には、中国のオンラインゲーム企業、上海ジャイアント・ネットワーク・テクノロジーとアリババ集団からなる企業共同体(コンソーシアム)が、イスラエルのプレーティカを44億ドルで買収した。プレーティカは仮想通貨を使うオンラインゲームなどの開発で知られる企業で、当時は米国のゲーム大手シーザーの傘下にあった。

 同じ年に上海国際港務集団(SIPG)は、イスラエル北部のハイファ港に投資し、2021年から25年間にわたって同港を管理する契約を獲得した。このプロジェクトは中国の一帯一路計画の一環だ。イスラエルは一帯一路を支持している他、中国が2015年12月に発足させたアジアインフラ投資銀行(AIIB)にも、57カ国の創設国の1国として加わっている。

 華為技術(ファーウェイ)もイスラエルに2カ所の研究開発センターを設置し、イスラエル人のITエンジニアにクラウド・コンピューティングなどの研究を行わせている。

イスラエル・中国の相思相愛

 中国企業の関心は製造業や食品企業、ハイテクノロジーに留まることなく、金融部門など多岐に及んでいる。テルアビブの高級レストランでは、イスラエル人と歓談する中国人ビジネスマンの姿を頻繁に見かける。テルアビブのZAG-S&W法律事務所によると、中国の対イスラエル投資額は2016年、前年比3倍に増えて160億ドルに達した。最大の理由は、中国企業によるイスラエルのハイテク企業への投資が増えたからだ。

 イスラエルのベンチャー投資関係者の間で、「中国企業によるイスラエル企業の買収件数は今後、毎年20~30%増えるだろう。数年もすれば、中国のイスラエルへの投資額は現在の2倍に増えるかもしれない」という予測が出ている。

 イスラエルのナフタリ・ベネット経済大臣は、2015年2月に「今後イスラエルはアジア、特に中国との経済関係に力点を移すという、戦略的決定を行った。とにかくこれからは中国・中国・中国だ」と述べている。