サイバーセキュリティ関連技術が得意

 イスラエル人たちが最も得意とするのは、デジタル・テクノロジーだ。今多くのベンチャー企業がしのぎを削る「戦場」は自動運転テクノロジーや、車のナビゲーションに関するアプリケーション、ハッカーによるサイバー攻撃から企業や個人を守るためのサイバーセキュリティ、物のインターネット(IoT)、フィンテック(デジタル化された金融サービス)などである。また人工知能(AI)や機械の学習機能(マシーン・ラーニング)、ビットコインなどのクリプトカレンシー(暗号通貨・日本ではしばしば仮想通貨と呼ばれる)を売り物にする企業が増えている。

 サイバーセキュリティは、イスラエルが最も得意とする分野の一つだ。企業をコンピューター・ウイルスなどから守る防壁、つまり「ファイアーウォール」の技術がイスラエルで生まれたことをご存じだろうか。

 この技術を生んだのは、1993年にテルアビブで創業したチェック・ポイント・ソフトウエア・テクノロジーズ(以下チェック・ポイントとする)である。同社が1994年に発売した「ファイアーウォール1(VPN-1とも呼ばれる)」は、世界で初めて商業用に開発されたサイバー防御ソフト。つまり、この会社はサイバー攻撃から企業を守る技術の草分けだ。

テルアビブ郊外のラマト・ガンでは高層ビルが次々に建設されている(筆者撮影)
テルアビブ郊外のラマト・ガンでは高層ビルが次々に建設されている(筆者撮影)

 同社はその後新しいバージョンを次々に発売し、サイバー防御テクノロジーの「国際標準」を打ち立てた。チェック・ポイントは、「我が社のサイバー攻撃防御技術は、88カ国で使用されており、世界の多くの大企業のITシステムを防衛している」と主張する。世界中でチェック・ポイントの製品を使っている企業や官庁の数は、10万を超える。同社は、サイバーセキュリティの分野ではマーケット・リーダーと呼ばれている。

インテルの巨額買収

 もう一つ世界中の企業が注目しているのが、イスラエルの自動運転技術だ。2017年3月13日に、米国の巨大IT企業インテルは、イスラエルの自動車関連ハイテク企業モービルアイを買収すると発表した。インテルは、2017年に韓国のサムスン電子に抜かれるまで、1992年から25年間にわたって世界最大の半導体メーカーだった。

 世界中のIT・自動車業界の関係者を驚かせたのは、153億ドル(約1兆6830億円)という買収金額である。これは、外国企業がイスラエルで行った企業買収の中で最高の金額だ。

 この買収は、イスラエルにとって歴史的な出来事である。同国のベンジャミン・ネタニヤフ首相は、インテルが買収を発表すると、「モービルアイの遠大な構想が現実化した。イスラエルは世界の自動車テクノロジーの中心になった」という声明を発表した。

 モービルアイの年商は、インテルの年商の100分の1にも満たない。大御所インテルが巨額の金を投じて「小人」を買った理由は、モービルアイが自動運転に不可欠のテクノロジーについて世界的リーダーの立場にあるからだ。

 1999年に創設されたモービルアイは、自動運転技術の中核となる、画像情報処理システムのパイオニアだ。同社は、自動運転技術が持つ潜在性に世界で最も早く気づき、その実用化をめざした会社である。すでにBMWなど多くのメーカーが同社の自動運転技術に依存している。インテルはモービルアイを買収することで、全世界で急速に進むモビリティー革命の中で一挙に重要な地位を占めることになった。

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