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 欧米企業はイスラエルに強い関心を寄せている。日本ではあまり知られていないが、21世紀に入ってから米国やドイツ、中国の企業はイスラエルで積極的に企業を買収したり、現地事務所を開いたりしている。この国では優れたデジタル技術を持つスタートアップ企業が次々に生まれているからだ。同国は「第2のシリコンバレー」とすら呼ばれる。最近になって日本企業もようやく関心を示し始めたが、他国に比べると大幅に遅れた。なぜこのような差がついたのだろうか。2回に分けてお伝えしよう。

日本を大きく上回る成長率

 イスラエルというと、日本の大半のメディアが主に報じるのはテロや戦争に関するニュースだ。経済についての話題はめったに報じない。このため多くの日本人が「危険な中東の一国」というイメージしか持っていない。だが日本のメディアの国際報道だけではイスラエルの奥深さを理解することはできない。私はこれまでドイツからイスラエルを8回訪れて、このユニークな国について学んできた。

 イスラエルの国土は小さい。同国の2017年の人口は、約878万人(イスラエル中央統計局調べ)で、東京23区(947万人)に満たない。日本の人口(1億2776万人)の約15分の1だ。

 だがイスラエルはテクノロジーの分野では決して小国ではない。20世紀に入ってからハイテク立国イスラエルの潜在的な成長力が大きく注目されている。

 イスラエルの近年の経済成長率は、ハイテク産業などの活況のために、他国を大きく上回っている。OECD(経済協力開発機構)によると、同国の2017年の実質GDP成長率は3.3%で、日本やドイツ、米国よりも高かった。

 さらに、イスラエルの国民1人あたりのGDPは、2010年から2017年までに約33%も増えた。これは、日・独・米を大きく上回るスピードだ。この調子で行けば、日本とイスラエルの国民1人あたりGDPの差は、急速に縮まるだろう。

毎年1000社のベンチャー企業が生まれる国

 高い経済成長の源泉は、同国のハイテク産業、特にスタートアップと呼ばれるベンチャー企業だ。現在イスラエルには、5000社を超えるベンチャー企業がひしめいている。

 この国では、毎年1000社を超える新企業が産声を上げている。ドイツのコンサルタント企業ローランド・ベルガーは、2016年に発表した「スタートアップ国家からの教訓」という報告書の中で、「2015年の1年間だけで、テクノロジー関連のベンチャー企業が約1400社創設された」と述べている。またイスラエルのハイテク関連ウエブサイト「ギークタイム」も、2016年に誕生したベンチャー企業の数を1380社と推定している。これらの数字が正しいとすれば、イスラエルでは毎日3~4社のミニ企業が産声を上げていることになる。