首都ベルリンで史上最低の得票率

 9月18日には、首都ベルリンで市議会選挙が行われた。ベルリン市は州と同格だ。このため首都での選挙は、市議会選挙と呼ばれていても、重要な意味を持っている。ところがCDUは、この選挙でも歴史的な敗北を喫した。同党は前回の選挙に比べて得票率を5.7ポイント減らして、17.6%しか取れなかった。これはベルリン市議会選挙におけるCDUの得票率としては、過去最低である。

 これに対しAfDは14.2%の得票率を記録して初の議会入りを果たした。世論調査機関インフラテスト・ディマップの推計によると、前回の選挙でCDUに投票した市民28万8000人のうち、3万9000人がメルケルに背を向けてAfDに票を投じた。

 ちなみにAfDは他の大半の既成政党にも痛打を与えた。社会民主党(SPD)の得票率は28.3%から21.6%に下がったほか、緑の党も得票率を17.6%から15.2%に減らした。

 つまり今年のドイツでは、どの州議会選挙でもCDUなど伝統的な政党が得票率を減らし、AfDが2桁の得票率を確保するというパターンが定着したのだ。

AfDは保守層を侵食

 特に、バイエルン州を地盤とするキリスト教社会同盟(CSU)――CDUの姉妹政党――の危機は深刻だ。CDUとCSUの中の超保守層、右派に属する人々は、メルケルの政策を「あまりにもリベラルで左派的」と考えている。彼らは昨年9月のシリア難民受け入れ以来、CDUとCSUを自分の「政治的故郷」と感じることができず、疎外感を日に日に強めているのだ。こうした人々がCDUとCSUに背を向け、AfDに票を投じている。

CSUは、自分たちよりも右に位置する党が誕生したことについて、特に危機感を強めている。2015年9月にメルケルがシリア難民の受け入れを決めた直後に、CSUのホルスト・ゼーホーファー党首(バイエルン州首相)が「この決定は、大きな誤りだ」とメルケルを批判し、「難民の毎年の受け入れ数を20万人に限定するべきだ」と要求したのは、AfDに支持者が奪われることを強く危惧したからである。彼の危惧は、現実のものとなった。

敗北の責任を認めたメルケル

 ベルリンでの敗北が明らかになった直後、メルケルは記者会見で「今回の無残な開票結果には、失望している」と述べた。そして、メクレンブルク・フォアポンメルン州とベルリンでの「ダブル敗北」の原因は、彼女が2015年9月に行った難民受け入れの決定にあるとして、自身の責任を認めた。

 メルケルは「難民受け入れの決定自体は間違っていなかった。しかし我々は長期間にわたって、難民流入の状態を十分にコントロールすることができなかった。あのような状況は、二度と起こしてはならないと思っている」と述べた。

 ドイツには2015年、約89万人の難民が到着。連邦政府は、全ての難民の身元の特定や指紋登録などを行うことができなかった。つまり政府は一時的であるにせよ、難民入国を制御できない状態に陥ったのだ。メルケルがこれほど率直に政府の失敗を認めるのは、珍しい。

 さらに彼女は「現在、難民危機への対処が遅々として進まないのは、我々が過去数年間に過ちを犯してきたからである。今や我々は問題を解決するために、通常よりも一層努力しなくてはならない」と付け加えた。

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