今同じことが、右派の間で起きている。つまりCDU・CSU(キリスト教社会同盟)よりも右の政党が生まれる「右派革命」が進行しているのだ。ナチスの過去を持つドイツにとって、右派革命は、緑の党の躍進よりもはるかにデリケートな問題である。貿易立国であるドイツにとって、右傾化は対外的なイメージの悪化につながるからだ。

CDUは首相のお膝元でも敗北

 CDUの退潮は、9月に旧東ドイツのメクレンブルク・フォアポンメルン州で行われた州議会選挙でも、歯止めがかからなかった。AfDは20.8%もの得票率を記録して、第2党として議会入りに成功。逆にCDUは、得票率を23%から19%に減らして大敗。同党はSPD、AfDに次ぐ第3党の地位に転落した。AfD以外のほぼ全ての党が前回(2011年)の選挙に比べて得票率を落とした。

 AfDが躍進した最大の理由は、同党がメルケルの難民政策を激しく批判したためである。市民の間では、メルケルの難民政策に対する不満が高まっていた。民間放送局N24が今年7月に実施した世論調査によると、回答者の57%が「メルケルの難民政策は失敗した」と答えた。また公共放送局ARDが9月1日に発表した世論調査によると、メルケルへの支持率は45%だった。これは、過去5年間で最低の水準だ。

 AfDは、メルケルが昨年人道的な理由で行った難民受け入れ決定を批判し、亡命権を制限するよう求めている。同党は、「戦火を逃れてドイツに一時的に逃げてくる難民は受け入れるが、亡命する理由もないのにドイツに不法に入国する外国人は受け入れるべきではない。ドイツへの移民は、我が国の経済が必要とする知識や技術を持っているか、経済に貢献できるかどうかを基準に決めるべきだ」と主張してきた。

 メクレンブルク・フォアポンメルン州は、旧東ドイツでも最も貧しい州の一つ。市民の間には、「多数の難民が流入したら、単純作業などの仕事を奪われるかもしれない」という不安感がある。AfDのメルケル批判は、市民の琴線に触れた。

 この州でも投票率が前回の選挙から10ポイントも増えて、61.6%となった。前回棄権した66万6000人の無党派層のうち、5万5000人が今回投票所に足を運び、AfDに票を投じた。AfDは、CDUなどの伝統的な政党よりも、政治に無関心な有権者を動員する力を持っている。

 今回の選挙結果は、メルケル個人にとっても痛打だ。メクレンブルク・フォアポンメルン州には、メルケルの連邦議会選挙での選挙区があるからだ。AfDはこの地域でもCDUなどの票を奪って躍進した。たとえばフォアポンメルン・グライフスヴァルト第3選挙区では、AfDの得票率が32.3%に達し、CDU(17.7%)に大きく水をあけている。有権者のほぼ3人に1人が、「難民が警官の制止を聞かずに国境を越えようとした場合には、武器を使ってでも侵入を止めるべきだ」と考える政党に票を投じたのは、驚くべきことである。

 CDUとSPDが構成するメクレンブルク・フォアポンメルン州の大連立政権は、過去4年間に雇用を増やし、失業率を低下させることに成功した。同州の失業率は、2011年には12.5%だったが、2015年には10,4%に低下している。だが多くの有権者は、伝統的な政党がもたらした経済的な成果を高く評価するよりも、AfDが強調した「難民増加による脅威」を理由にCDUとSPDを罰する道を選んだ。つまり同州の有権者たちは、経済的な合理性よりも、難民政策に対する感情的な反発によって突き動かされたのだ。

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