さらにロシアは、フランスの右派ポピュリスト政党「国民戦線(フロン・ナショナール=FN)」に資金を援助している。FNは、英国と同様に、EU離脱に関する国民投票を実施するよう要求している。プーチンにとって、EUの足並みを乱す政党は味方なのである。またユーロ圏からの脱退を求めているドイツの右派ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」も、ロシアに友好的な態度を持っていることで知られている。

 ちなみに日本では、ドイツ首相のメルケルとプーチンは仲が良いと多くの人が信じている。これは誤解である。むしろ、この2人は仲が悪い。メルケルは東ドイツで育った。多くの東ドイツ人は「占領国」であるソ連に反感を抱いていた。

 メルケルはモスクワを訪問した際に、ロシア政府に批判的な人権団体のメンバーを訪ねたことがある。これはプーチンに対する面当てである。一方、プーチンはメルケルを別荘に招待した時に、メルケルが犬嫌いであることを知っていながら、会談をした部屋に犬を連れ込んだ。このためメルケルは顔面蒼白になった。明らかな嫌がらせである。

 メルケルがロシア語、プーチンがドイツ語を流暢に話すことは事実だが、それは両者が親しいということを意味しない。プーチンの刎頸の友は、メルケルの前任者だったシュレーダーである。

 プーチンがヨーロッパで、国外にいるロシア系住民の権益を守るという目標を前面に打ち出している中、彼は極東で、ロシア人が住む島を日本に返還するだろうか。我が国は、プーチンと北方領土の返還について交渉する際に、彼がヨーロッパでNATOと対峙し、軍事的な緊張が高まっている事実を念頭に置く必要があると思う。地政学的な変化が急速に起きつつある時代には、極東だけではなく、世界の他の地域にも目配りをする、複眼的思考が重要になる。(敬称略)