中小企業から最も頻繁に出される質問は、「インダストリー4.0に投資するとどのような効用があるのか」というものだ。デジタル地図は、個々の企業がどのような分野でインダストリー4.0の技術を応用し、実用化がどの段階にあるのかについて知るための情報源となる。

 さらにPI4は全国の商工会議所と協力して、中小企業の関心が高いデータ保護、法的な枠組み、工業規格、IoTに関するノウハウの伝達などをテーマにして、50回以上にわたり講習会を開いてきた。

 またPI4は、IoT技術を導入するための実験や研究を行いたいと希望する企業を支援する事業も行っている。この団体には5つの作業部会がある。このうちイノベーションを担当する第2作業部会は、「ラブス・ネットワーク・インダストリー4.0(LNI4.0)」というプロジェクトを実施している。LNI4.0は「インダストリー4.0を導入したいが、どのように行ったらよいかわからない」という中小企業のために講習を行ったり、企業のエンジニアらに、ベルリンなどに設置した実験施設で、デジタル化に関する様々なテストを行わせたりしている。

 中小企業は、LNI4.0に協力している企業や研究所を訪れて、「電子機器製造プロセスにおけるビッグデータの収集」や「手術室における医療機器のネットによる接続」などのテーマについて、実験を行うことができる。LNI4.0の特徴は、インダストリー4.0に投資するべきかどうかを決めかねている企業が、まず実験やデモンストレーションを行うことによって、自社にとってインダストリー4.0がどのような利点をもたらすかを、学ぶことができる点だ。

 またPI4は、このようなプロジェクトや協力企業、研究所の連絡先をインターネット上で多数公開しているので、関心のある企業は簡単に情報を集めたり、コンタクトを取ったりすることができる。こうした情報公開インフラの豊かさは、連邦政府が全面的にインダストリー4.0をバックアップしていることを強く感じさせる。そして、政府が、インダストリー4.0の重要性を1社でも多くの企業に理解させようと努力していることが感じられる。

IoTが雇用にもたらす悪影響を最小限に!

 ドイツ政府がIoTに深く関与するもう一つの理由がある。それは、経済のデジタル化が雇用に与える悪影響を最小限にするためだ。

 IoTの影響は、GDPの増加など良い面ばかりではない。この革命は社会に「負け組」も出現させる。

 ドルトムント大学で社会学を教えるハルトムート・ヒルシュ・クラインゼン教授は、「ドイツの就業者のうち15~20%については、再教育を行っても、デジタル化に適応することが難しいと見られている。そうした人々に手を差し伸べることも重要だ。大企業と中小企業、ハイテク企業とローテク企業の間で大きな格差が生まれるのは、好ましくない」と指摘する。