さらに、デジタル・プラットフォームを使えば、国際的な販売チャンネルを持たない中小企業でも、未知の顧客や市場を開拓し、販路を拡大することができる。

デジタル・プラットフォームの光と影

 だがこのデジタル・プラットフォームは、ドイツの中小企業に利点だけをもたらすわけではない。部品や製品を求める顧客は、メーカーではなく、まずデジタル・プラットフォームを運営する企業と接触することが増える。このため、メーカーと顧客が直接接する機会がこれまでよりも減ることになる。つまり、メーカーと顧客の間に、デジタル・プラットフォームの運営企業が割り込んでくるのだ。これはメーカーの地位を低めることにつながりかねない。

 シュトゥットガルト大学で労働科学とテクノロジー管理について教えているハンス・イェルグ・ブリンガー教授は、「デジタル・プラットフォームの運営企業が、スマート・サービスを提供するメーカーと顧客の間の仲介役を果たすだろう。プラットフォーム運営企業が、市場へのアクセス権をがっちり握ることになる。顧客はプラットフォーム運営企業と接触するので、スマート・サービスを提供するメーカーを現在ほど意識しなくなる」と予想する。

 つまり中小企業がデジタル・プラットフォーム戦略を自ら打ち建てないと、プラットフォームに製品やサービスを提供する下請け企業に成り下がるというわけだ。

 さらにドイツの中小企業の間には、「機微な製造ノウハウをデジタル・プラットフォームに公開すると、ハッカーに盗まれたり、不正な操作を受けたりする危険が増えるのではないか」という懸念も強い。今年に入ってから、ワナクライやペティアなどのマルウエアが、世界各地で企業のITシステムに深刻な影響を与えている。製造・販売工程のデジタル化が進むほど、サイバー攻撃に対する企業の脆弱性も高まる。

 ドイツの中小企業はイノベーション力が高く、企業間取引に特化している。メディアや消費者には名前が知られていなくても、特定のニッチ分野ではグローバル市場で大きなシェアを占める企業が多い。彼らは、顧客企業が「その製品がないと、我が社の生産活動に支障が出る」と考えざるを得ない状況を生み出すことによって、価格競争に巻き込まれることを防いでいる。ドイツでは税金や社会保険料が高いので、付加価値つまり価格が高い製品に特化しないと、長期間にわたって生き残ることは難しい。