メルケル氏は「我々は、どの職業を選ぼうか迷っている若者たちに、IT業界が秘める大きな可能性について理解させる必要がある。この業界では、人材への需要が今後も増えるだろう。また中小企業は、インダストリー4.0を導入する上で、IT専門家を確保することが極めて重要になる。IoTに関する全ての業務をアウトソースすることは不可能であり、自社のIT対応力を高めなくてはならない」と語った。
この背景には、高い技能を持つIT専門家の不足が、ドイツの中小企業が生産工程のデジタル化を進める上で、大きな障壁になっている現実がある。
メルケル氏は「現在ドイツの大学や高等専門学校で機械工学やITを専攻する学生のうち、女性はまだ25%にすぎない。これからはエンジニアやITプログラマーとして働く女性の比率をもっと増やすべきだ」と述べた。
ビッグデータによる新ビジネスの開拓がカギ
さらにメルケル氏は、「ドイツ企業は、ビッグデータを活用した新ビジネスについて尻込みしてはならない。我々は従来の製造・販売工程をデジタル化するだけではなく、ビッグデータを使って新しいサービスや製品を提供しなくてはならない」と述べた。
この発言には、インダストリー4.0は単に生産効率の改善をめざすものではなく、インターネットでつながれた製品がメーカーに送る大量のデータを使って、新しいサービスや製品を提供する「スマート・サービス」こそが、IoT計画の最も重要な点だというメッセージが込められている。
ドイツ工学アカデミーも、インダストリー4.0が生産性の改善だけで終わり、ビッグデータによる新ビジネスモデルの開拓につながらなければ、成功とはいえないという見方を取っている。自動化による生産性の改善ならば、日本の製造業界がとっくに実現しているからだ。インダストリー4.0の神髄は、ビッグデータ解析による新たな付加価値の創出にある。
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