ロシアが予定する秋季大演習への不安

 NATO幹部らは、ロシアが今年9月中旬にこの地域で予定している秋季大演習に神経をとがらせている。「ザパト2017」(ロシア語で西方の意味)と名付けられた演習には、カリーニングラードとロシア軍西部軍管区から、約10万人の将兵が参加する。

 ロシア側は公式には、「ベラルーシに侵攻したNATO軍を撃退する」というシナリオを想定している。だがNATOは、ロシアの真の目的は、スバルキ・ギャップを占領するための予行演習ではないかと見ている。

 リトアニア大統領のダリア・グリボウスカイテは、今年2月にラトビア、エストニアの大統領らと会談した後、記者団に対し「リスクは明らかに高まりつつある。我々は、攻撃的な大兵力を動員するザパト2017が国境近くで行われることを強く懸念している。これらの部隊は、西側との戦争を想定している」と述べ、強い危機感を表明した。さらにグリボウスカイテは、「NATOに対して、ザパト2017の期間中に、バルト3国に駐留する兵力を増強したり、不測の事態に備える緊急対応プランを作ったりすることを要求するつもりだ」と語っている。

 バルト3国がこの演習に神経をとがらせているのは、演習時にロシア軍部隊が国境を侵犯する可能性があるからだ。ロシアは2014年2月、ウクライナ国境近くで大規模な軍事演習を行った直後に、クリミア半島を占拠・併合した経緯がある。

 リトアニアの国防大臣ライムンダス・カロブリスも、ロイター通信に対して「秋季大演習によって、我が国の国境付近に大兵力が集結することは、リスクが高まることを意味する。我々はNATOと協議して、ロシアのいかなる挑発行為にも適切に対応できる態勢を整えるつもりだ」と語っている。

 カロブリスは、「ロシアが欧州の地政学的なバランスを崩し、支配力を回復したいと思っていることは、明らかだ。これは、バルト3国そして東欧諸国にとって、すでにリスクを意味する」とも述べた。

 NATOが今年7月に対空ミサイル「パトリオット」をリトアニアに初めて配備したのも、西側諸国とバルト3国の警戒心の表れである。

 もちろん、「NATOが常駐しているのだから、ロシアによる侵攻はあり得ない」という意見もある。ソ連崩壊後にロシアからドイツに帰化したあるユダヤ人は、「さすがのプーチンもNATOと正面から事を構える気はないだろう」と語る。

 EUにおいて各国の地方自治体を代表する地域委員会(COR)で委員長を務めるマルック・マルックラ(フィンランド人)も、「ロシアが、24時間以内にバルト3国を攻撃できる態勢を整えたという噂が流れているが、私はロシアがバルト3国を侵略するとは思えない。我々フィンランド人は、100年間にわたり、ロシアの隣人として独立を守ってきた」と語っている。

 しかし、ロシアが国際法を無視してクリミア半島を併合した「実績」がある以上、欧州諸国が「最悪の事態はあり得ない」と断定して、備えを怠れば、不注意のそしりを免れないだろう。地政学的情勢に関して、「世界のタガが外れた」としばしば形容される今日、我々はあらゆる事態を想定しておく必要がある。