イスラエルの支援者、トランプ大統領

 イランやレバノンのメディアはT4に対する爆撃で死亡した7人のイラン軍人の顔写真を公表し、「この攻撃に対して必ず報復する」というイラン政府高官のコメントを引用している。

 一方、イスラエルの背後には米国のトランプ政権という強力な庇護者が控えている。トランプ大統領は、長年の伝統を破って、米国大使館をテルアビブからエルサレムへ移転すると決定するなど、歴代の大統領の中でも特に親イスラエル色が強い。トランプ政権は、オバマ政権が成立させたイランとの核合意について、イスラエル政府と同様に極めて批判的な見方を取っている。イスラエル政府は「歴史上最悪の合意」と呼び、「イランは合意の陰に隠れて、核兵器開発を続けている」と主張している。

 イスラエルにとって米国は、世界で最も重要な支援国だ。米国議会調査局のジェレミー・シャープ研究員が2016年12月に発表した報告書によると、米国がイスラエルに対して行った2国間援助の総額は、第二次世界大戦以降2015年までに1274億ドルにのぼる。そのうちの63%が軍事援助だ。イスラエルほど多額の援助を米国から受け取った国は、他にない。さらに両国が2016年に調印した覚書に基づき、イスラエルは2019年からの10年間に380億ドルもの軍事援助を米国から受け取ることが決まっている。

サウジアラビアがイスラエルとの関係改善へ

 興味深いことに、同じようにイランに手を焼いているサウジアラビアが、イスラエルと軍事諜報などの面で協力しつつある。サウジアラビア国民の大半はスンニ派で、シーア派のイランとは犬猿の仲である。サウジアラビアは、隣国イエメンの内戦に介入し、イランが支援するシーア派勢力と戦っている。

 イランが支援するイエメンの武装組織フーシは、2017年11月にサウジアラビアのリヤド空港を狙って弾道ミサイルを発射した。サウジアラビアが迎撃ミサイルでこれを空中で破壊することに成功したため、被害はなかったが、サウジアラビアはこの攻撃を「イランの戦争行為」と断定している。スンニ派の国々は、イランがシーア派の武装組織を使って、「代理戦争」をさせていると考えているのだ。

 今年4月3日に流れたあるニュースは、多くの中東専門家を驚かせた。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が、米国の「アトランティック」誌とのインタビューの中で、「パレスチナ同様に、イスラエルにも生存の権利がある」と発言したのだ。サウジアラビアの権力者が、イスラエルの生存権を認める発言をしたのはこれが初めて。これは、中東の政治地図を塗り替える、重要なメッセージである。

 サウジアラビアは、「敵の敵は味方」と考えて、イランと対立するイスラエルとの関係を改善しようとしているのだ。サウジアラビアがかつての敵国イスラエルと手を組むことは、イランの脅威に対する懸念が、スンニ派が主流派である国々の間でいかに高まっているかを浮き彫りにしている。

一触即発の危険は続く

 ハイファ大学のダン・シュフタン教授は筆者とのインタビューの中で、「これからもイスラエルは戦争を経験するだろう。次の戦争では、テルアビブなどの大都市に多数のミサイルが撃ち込まれ、多数の死者が出るかもしれない」と悲観的な見方を打ち出していた。同氏はイランをイスラエルにとって最大の脅威と見なしている。

 シリア危機の特徴は、ロシア、イラン、トルコ、過激派組織イスラム国(IS)、クルド人など様々な国家、勢力が入り乱れて戦っていることだ。このため欧州では「小さな第三次世界大戦」といういささか大袈裟な言葉すら使われている。

 イランがイスラエルに対する挑発を強めた場合、トランプ大統領がイランとの核合意を放棄し、同国への制裁措置を強化する可能性もある。それは、中東に生まれつつあるシリア・イラン・ロシア枢軸を刺激し、この地域における東西対立の火に油を注ぐだろう。ハイテク産業についてイスラエルと経済関係を深めつつある欧州諸国にとって、大きな懸念の種だ。

 アサド政権と反政府勢力との戦闘や化学兵器の使用問題だけでなく、シリアにおけるイスラエルとイランの対立からも目を離すことができない。

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