今年3月最後の週末は、十字架にはりつけにされたキリストの復活を祝う「復活祭(イースター)」だった。キリスト教徒にとっては、クリスマスに次いで重要な行事であり、長い冬が終わり春が到来したことを祝う祭りだ。生命力のシンボルである卵やウサギの形をしたチョコレートが、町のショーウインドウを飾る。

陰鬱な復活祭
今年の欧州の復活祭は、極めて重苦しい雰囲気に包まれた。過激組織イスラム国(IS)の毒牙が、再び欧州を襲ったからだ。
ISの戦闘員は、3月22日にベルギーの首都ブリュッセルの空港と地下鉄で爆弾テロを起こした。35人が殺害され、日本人2人を含む約270人が重軽傷を負った。ブリュッセルは、EU(欧州連合)本部がある「欧州の心臓部」。この町を直撃したテロは、EU加盟国政府と市民に強い衝撃を与えている。
ローマ教皇フランシスコも、3月25日にコロシアムで行われた復活祭の行事で、ISを名指しすることを避けながらも、間接的にISのテロを糾弾した。「ある宗教の信奉者の一部は、彼らの神を冒涜している。彼らは、類を見ない暴力を正当化するために宗教を利用している」。
欧州では昨年以来、大規模なテロが続発している。昨年1月にはパリの風刺雑誌「シャルリ・エブド」の編集部で編集長やイラストレーターら11人が射殺されたほか、ユダヤ系スーパーでも買い物客ら4人が犠牲になった。10か月後には、ISのテロリストがコンサートホールやレストランで市民130人を無差別に射殺し、352人に重軽傷を負わせる未曽有の惨事が起きた。
このパリのテロ以来、イスラム系テロリストの「フランス・ベルギー・コネクション」が浮かび上がりつつある。フランスとベルギーの捜査当局は、パリ事件の犯行グループと、今回のブリュッセルの事件の犯行グループの間に密接な繋がりがあると見ている。
たとえばブリュッセルでテロ攻撃を行ったブラヒム・バクラウィ とその弟ハリド、さらにナジム・ラーシュラウィ は、パリの同時多発テロの首謀者アブデルハミド・アバウド と密接な関係があった。
フランスの捜査当局は、パリの事件で使われた自爆ベストの破片から、ナジム・ラーシュラウィの指紋を検出している。ラーシュラウィは2013年にシリアに渡航して、ISの軍事教練を受けた経験を持つ。このため捜査当局は、ラーシュラウィがアブデルハミド・アバウドのグループのために自爆ベストを製造した疑いを強めている。
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