イタリアでも難民問題が重要な争点に

 さてドイツやフランスと同じく、イタリアの総選挙でも難民問題が争点の1つとなった。地中海に面するイタリアには、北アフリカや中東から過去4年間に約60万人の難民が到着した。欧州連合統計局によると、2016年にイタリアで亡命を申請した難民の数は約12万人。2年間でほぼ2倍に増えたことになる。難民受け入れ数は、ドイツに次いで多い。

初めて亡命申請をした難民の数
(到着した難民の数ではありません)
2008 2010 2012 2014 2015 2016
EU28カ国 152,890 206,880 278,280 562,680 1,257,030 1,206,120
ドイツ 21,325 41,245 64,410 172,945 441,800 722,265
イタリア 30,140 10,000 17,170 63,655 83,245 121,185
フランス 48,030 54,265 58,845 70,570 76,790
英国 31,290 22,615 27,885 32,120 39,720 39,240
チェコ 1,050 380 505 905 1,235 1,200
資料・欧州連合統計局

 イタリアで失業率が2桁を超える中、「同盟」などの右派ポピュリスト政党は、選挙運動の中で「難民がイタリア人から職を奪う」と市民に訴える排外的なキャンペーンを展開した。彼らのプラカードには、「(外国人の)侵略を止めよう」というスローガンが書かれていた。

 選挙運動の期間中に起きた事件は、イタリア人に治安の悪化を痛感させた。今年1月31日には、イタリア中部のマチェラタで18歳の女性が殺害され、警察はナイジェリア人の亡命申請者を容疑者として逮捕した。その5日後には同じ町で、6人の外国人が走行中の車からピストルで撃たれて負傷した。発砲した28歳のイタリア人は、2017年に「同盟」から地方選挙に立候補していた。警察に逮捕された時、イタリアの国旗で身体を包み、「イタリア万歳」と叫んだことから、イタリアの報道機関はこの男が極右的な思想の持ち主であると見ている。

 難民たちは、気候変動・干ばつによる飢餓や、内戦から逃れて、あるいは欧州の豊かな社会保障を目当てに、船で地中海を超えてイタリアにたどり着く。イタリア政府はEUに支援を要請したが、EUは同国に対して十分な援助を提供してこなかった。さらにイタリアは、同国に到着した難民を、他の加盟国が人口やGDPの比率に応じて受け入れることを求めているが、中東欧諸国はこれを拒否している。このため難民受け入れに関する負担が、ドイツやイタリアに重くのしかかっている。

 つまり難民問題については、加盟国の国家エゴがむき出しになり、EUの連帯は事実上崩壊している。このことも、イタリア人がEUに対して不満を抱く一因となっている。

 EUは、「2015年にエスカレートした難民危機は、まだ序章である」と見ている。欧州の人口学者たちは、出生率が高い北アフリカや中東では、職や住居を見つけられないために、経済難民として豊かな欧州に向かう若者が将来増えると予想している。

 その意味で、今回イタリアの有権者のほぼ3人に1人が排外的な政策を掲げる中道右派連合に票を投じたことは、フランス、英国、オランダ、ドイツでの右派ポピュリズムの躍進と同一線上にあると見るべきだ。「同盟」が不法移民に対する国外追放措置の強化などを前面に押し出した選挙戦を展開し、下院選挙での得票率を前回の4.1%から今回一挙に17.4%に増やしたことは、特筆に値する。欧州では、「難民問題」は票につながるのだ。

 EU加盟国の民主勢力は、今後も当分の間、各国でのポピュリズムの高まりにいかに対抗するかという難題に取り組むことを余儀なくされるだろう。