イタリアの財政赤字の対GDP比率も2016年時点で2.5%で、ユーロ圏平均(1.5%)を上回る。イタリア政府が財政赤字と公的債務を減らすには、むしろ歳出をカットするとともに、増税して歳入を増やさなくてはならない。だが左派・右派ポピュリスト勢力は、逆に国民の税負担を減らす公約を掲げて、選挙に勝ったのだ。いわば「バラマキ型」の選挙戦である。これは、「イタリアは今後もユーロ圏の規則に違反し続ける」と堂々と宣言したに等しい。

EU主要国の累積公的債務比率
資料・欧州連合統計局

最悪のシナリオは左派・右派ポピュリスト連立政権

 イタリアのアキレス腱は、ギリシャと同じく成長率が低迷していることだ。2016年のイタリアのGDP成長率は0.9%で、ユーロ圏平均の半分。ギリシャ(▲0.2%)を除くと最低だ。経済協力開発機構(OECD)の2016年の統計を見ると、イタリアの経済成長率(0.9%)は、35カ国中で日本と並んで2番目に低かった。

 イタリアの今年1月の失業率は11.1%で、ギリシャ、スペインに次いでEUで3番目に高い。特にイタリアで深刻なのが若者の失業問題。25歳未満の市民の31.5%が路頭に迷っている。これはEU平均の2倍に近い数字だ。

 こうした状況の中で、新政権がEUの緊縮政策をそのまま実行するとは考えにくい。むしろ新政権は、ギリシャやスペインのように、これまで以上に積極的な財政出動をEUに要請したり、ユーロ・ボンドによる債務の共通化を求めたりする可能性が強い。

 EUは、債務危機への対処法をめぐって2つの派に分かれている。一つはドイツやオランダなど、各国の自助努力と緊縮政策を求める国々。もう一つは、フランスや南欧諸国など、財政出動を求める国々だ。

 これまでEUの中で英国は、緊縮政策を求めるドイツに援護射撃を行ってきた。だが来年英国がEUから脱退すると、EU内の力関係は大きく変わり、フランスやイタリアなど「財政出動派」の影響力が増加する。フランスのマクロン大統領はすでに独自の予算権を持つユーロ圏財政大臣のポストの新設や、ユーロ圏共通の銀行預金保護制度、国際通貨基金(IMF)にならった欧州通貨基金(EMF)の創設を提案している。ドイツの保守派はこれらの政策を「ユーロ圏の財政規律を緩める危険がある」と批判している。

 その意味で、イタリアに右派・左派ポピュリスト連立政権が誕生した場合、同国の国債の利回り(リスクプレミアム)が急上昇して、イタリア政府が自力で借金を行うことが困難になる可能性もある。EUと金融市場が最も懸念しているのは、「第2のユーロ危機」の再燃だ。イタリアの経済規模は、ギリシャに比べてはるかに大きいため、同国を救済するために必要になる融資額は莫大なものになるだろう。

EU主要国のGDP成長率
資料・欧州連合統計局