ポピュリズムへの防壁がなかったイタリア

 レンツィ前首相は5日午後、敗北の責任を取りPDの党首を辞任することを表明した。その表情は疲れ切っていた。「イタリアのマクロン」と嘱望された43歳のレンツィ前首相は、リベラルな市民の期待に応えることができなかった。

 昨年4月にフランスで行われた大統領選挙の1次投票でも、右派・左派のポピュリスト政党が合計41%の得票率を確保した。だがイタリアでは、ポピュリスト勢力の得票率がフランスのそれを29ポイントも上回っている。フランスではマクロンという若き親EU派がポピュリズムの荒波に抗して大統領の座についた。

 ドイツでは右派ポピュリストが約12%の得票を確保して初の議会入りを果たしたが、伝統的政党(CDU・CSUとSPD)が過半数を確保して、大連立政権の樹立にこぎつけた。

 こう考えると、イタリアの「病状」はフランスやドイツよりもはるかに深刻だ。イタリアの悲劇は、ポピュリスト政党に抗する堤防がなかったことである。

2018年3月4日・イタリア総選挙の結果(下院)
2013年の得票率 2018年の得票率
五つ星運動 25.6% 約32.7%
中道右派連合(同盟、フォルツァ・イタリアなど) 29.2% 約37.0%
中道左派連合(PDなど) 29.6% 約22.9%
資料・イタリア内務省

イタリアが「欧州の病人」に?

 さて五つ星運動、中道右派連合ともに単独では政権を樹立できない。EUは、ドイツに続いてイタリアでも何カ月にもわたって連立交渉が行われ、政権の空白が続くことに懸念を強めている。EUにとって最悪のシナリオは、EUに懐疑的な五つ星運動と中道右派連合が連立政権を築くことだ。今回の選挙で両勢力は、EUやユーロ圏からの脱退を要求しなかった。しかし両勢⼒はEUの緊縮策に極めて批判的で、ともに国⺠に減税を約束した。これは、EUの政策と完全に矛盾するものだ。

 来年英国がEUから離脱すると、イタリアはEUで第3の経済大国となる。しかしその重要な国が、「欧州の病人」になろうとしている。イタリアの財政状態はギリシャと同様に悪化する一方だ。欧州連合統計局によると、イタリアの累積公的債務の国内総生産(GDP)に対する比率は2016年時点で約132%だった。ギリシャ(約181%)を除くとEU加盟国で最悪の数字だ。ユーロ圏加盟国は、公的債務比率を60%未満に抑えることを義務付けられている。

 ドイツではこの比率が2010年以降年々下がっているのに対し、イタリアでは逆に増加する傾向にある。つまりイタリアの財政状況は、ドイツよりは問題児ギリシャに似た傾向を見せているのだ。

EUの緊縮策に真っ向から反対

 イタリアの銀行業界は、ユーロ危機の後遺症から完全には立ち直っていない。これもギリシャの病状との類似点だ。ドイツの経済日刊紙「ハンデルスブラット」は、2017年5月に「イタリアの銀行が抱える不良債権の額は、2016年末の時点で1260億ユーロ(16兆3800億円・1ユーロ=130円換算)と、イタリア国立銀行は推定している」と伝えている。イタリア政府は将来も、金融機関の倒産を防ぐための支援を迫られる可能性がある。