集団的自衛権の原則から逸脱?

 ペンスは3日後にブリュッセルのNATO本部で事務総長イェンス・ストルテンベルグと会談。その後の記者会見で、ミュンヘンでの演説よりも率直な表現を使い、「防衛支出の目標を達成しない同盟国に対する、米国市民の忍耐は、永遠には続かない」と述べている。彼は、そうした国に対して米国がどのような措置を取るかについては、明言を避けた。

 ペンスに先駆けて、2月15日にNATO本部を訪れた米国の国防長官ジェームズ・マティスは、ペンスよりも単刀直入に「他のNATO加盟国が防衛費増額の努力を怠るならば、米国は欧州防衛への貢献を減らす」と語った。これは、欧州に対する「恫喝」もしくは脅迫とも取れる発言だ。

 欧州の加盟国が最も強く懸念しているのは、北大西洋条約の第5条、つまり「NATO加盟国は、他の国に対して行われた軍事攻撃を、自国への攻撃とみなす」という原則が、トランプ政権によって揺るがされることだ。トランプがNATOを批判して以降、「欧州諸国は、対GDP比2%の目標を達成していない国が攻撃されても、米国は自国への攻撃と見なさず、反撃しないのではないか」という懸念を強めている。

 この点について、NATOの事務総長ストルテンベルグは、ペンスとの共同記者会見で「北大西洋条約の第5条が定める集団的自衛権について、(防衛費負担などの)条件を全く付けていない」と釘を刺している。この発言は、ロシアからの脅威に最も直接的に曝されているバルト3国やポーランドが抱く不安を緩和するためだろう。

独の2024年までの目標達成は不可能

 さてペンスに批判されたドイツにとって、2%の目標達成は容易なことではない。ドイツはロシアがクリミアを併合した2014年以来、防衛支出を毎年引き上げている。その増加率も、年々増えている。2017年には防衛支出を前年比で7.9%と大幅に増やした。その伸び率は、GDP成長率を上回る。

 だがストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が2015年の各国の防衛支出を比較した統計によると、ドイツの支出は393億9300万ドルで、米国(5960億ドル)の約15分の1に過ぎない。

主要NATO加盟国の防衛支出の対GDP比率(2016年)
主要NATO加盟国の防衛支出の対GDP比率(2016年)
(出所:NATO)

 NATOの統計によると、2016年のドイツの防衛支出の対GDP比は、NATO加盟国28カ国中で第16位(2%の目標に達しているのは、米国、ギリシャ、英国、エストニア、ポーランドの5カ国だけ)。つまりNATO加盟国の82%は、2%の目標に達していない。

ドイツの防衛支出の対GDP比率
ドイツの防衛支出の対GDP比率
(出所:ドイツ連邦政府・NATO)

 ドイツの2%達成が難しい理由は、経済規模が大きいことだ。2017年のドイツの防衛支出は、370億ユーロ(約4兆4400億円)。2016年のドイツのGDPは、3兆1330億ユーロ(約375兆9600億円)。GDPの2%は、627億ユーロ(約7兆5192億円)である。

 つまりドイツが米国に対する約束を果たそうとすると、防衛支出を現在より257億ユーロ(約3兆840億円)も増やす必要がある。約70%もの増額だ。欧州最大の経済パワーといえども、これは難題である。ドイツが7年以内、つまり2024年までに、2%の目標を達成するのは不可能であろう。

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