ドイツでは2017年9月の連邦議会選挙以来、政府が存在しない異例の空白状態が4カ月間も続いているが、ようやく混乱が収まる兆しが現れた。

SPD、大連立本格交渉への参加を決定
1月21日に社会民主党(SPD)がボンで開いた臨時党大会で、代議員の過半数が、キリスト教民主同盟(CDU)、キリスト教社会同盟(CSU)との大連立をめざし本格交渉に入ることを承認した。党大会で厳しい表情を崩さなかったマルティン・シュルツ党首は、投票結果が明らかになると、隣に座っていた、アンドレア・ナーレス連邦議会・院内総務と抱き合って、喜びを全身で表現した。
この決議によって、CDU・CSUとSPDは連立協定書の調印をめざして本格的な交渉に入る。今年春にメルケル氏が率いる大連立政権が再び誕生することは、ほぼ確実になった。
SPDを分断する大きな亀裂
だがシュルツ党首は、極めて薄い氷の上を歩いていた。SPDの見解は一枚岩ではなく、大きく二分されている。そのことは、大連立への交渉入りに賛成した代議員の比率が56%にとどまり、44%が反対したことに表われている。SPDが割れている原因は、シュルツ党首自身にある。彼は、ドイツの政治史上でも珍しい右往左往を演じたために、党内で批判の矢面に立たされている。
2017年9月の連邦議会選挙で、彼が率いるSPDの得票率は、約20%という史上最低の水準に落ち込んだ。このためシュルツ党首は、開票結果が判明した直後に「SPDは野党席に戻り、党を改革する。政権に加わることはない」と宣言した。
彼は、SPDが大連立政権に参加しCDU・CSUと政策が似通ってしまったことが、選挙の敗因と考えたのだ。彼は野党席に戻り、党を改革し、CDU・CSUとの違いを際立たせることをめざした。だが多くの政治家は、「この発言は時期尚早ではないか」と感じていた。
SPDの下野宣言によってメルケル首相は、自由民主党(FDP)、緑の党と連立しなくては議会で過半数を確保できなくなった。だがFDPと緑の党はエネルギー政策や増税をめぐって鋭く対立。FDPは「メルケル首相は緑の党の肩を持ちすぎる」と不満を爆発させて、連立交渉から離脱してしまった。メルケル首相が「FDPと緑の党が激しく対立しても、最後は国益を考えて折り合うだろう」と考えたのは、大きな誤算だった。連邦議会選挙後に、各党が連立に失敗したのは初めてのことである。
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