ドナルド・トランプが大統領に就任する4日前の1月16日、ドイツの大衆紙「ビルト」と英国の「タイムズ」は、トランプとの独占インタビューを掲載した。このインタビューは、欧州で大きな波紋を呼んだ。欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)の幹部らに、「トランプは強硬な態度を和らげない。選挙戦の期間中に発言したことを、大統領に就任してからも変えることなく実行する」という印象を強く与えた。

トランプが穏健化する望みは薄

 インタビューはトランプタワー26階の、書類や本、野球帽などが雑然と置かれたトランプの執務室で行われた。窓ガラスの前には、シークレットサービスが防弾ガラスを設置していた。近くのビルから狙撃されないよう、トランプを守るためである。

 トランプはインタビューの中でこれまでの主張を繰り返している。その核心は、「トランプが大統領になって穏健化する可能性は低い」ということだ。たとえば彼は「昔に作られたNATOは旧態依然とした組織だ。そして十分な防衛費を支出しない加盟国がある。これは米国にとって不公平だ。NATOはテロリズムとの戦いにも十分貢献しなかった」と語り、冷戦を西側の勝利に導いた欧州安全保障体制の要の将来に大きな疑問符を投げかけた。

 さらに「米国が抱える対中貿易赤字は、数千億ドルの規模だ。これは大きな問題だ」と強調した。

 EUについては「米国を貿易面で不利な立場に追い込むために作られた組織」と形容し、「EUはドイツに大きな利益をもたらしている。したがって、英国がEU離脱を決めたことは、実に正しい選択だ。英国とは貿易協定を結びたい」と語った。さらに彼は「EUが存続しようが、分裂しようが、私にとってはどうでもよいことだ」と述べ、欧州への関心が薄いことを示した。

 さらに、「メキシコの工場で自動車を組み立てて、米国に輸入するメーカーには35%の関税を科す。企業はメキシコではなく、米国で製造するべきだ」という主張を繰り返し、その中でドイツのBMWを名指しした。同社は2019年にメキシコに工場を開く予定だ。

 またトランプは「ニューヨークの街を歩くと、目にするのはメルセデス・ベンツなどドイツの車ばかりだ。これに対し、ドイツではシボレーなどほとんど見かけない。これは不公平だ。私は自由貿易の原則に賛成だが、米国にとってフェアな自由貿易でないと困る」と不満を漏らした。

EUは強く反発

 これまで米国の大統領の中で、「EUは米国の利益を害するために作られた」とメディアに対して公言した者は、1人もいない。ビジネスマンであるトランプにとって、政界の不文律や慣習、同盟国との協定は、ほとんど意味をなさないかのようだ。

 これらの発言に対しEU加盟国からは、批判の声が上がった。ドイツの外務大臣フランク・ヴァルター・シュタインマイヤーは、1月16日に「トランプ氏がNATOは古臭いと発言したことは、大きな心配の種だ。彼の発言は、米国の次期国防長官が議会の公聴会でNATOを重視すると言ったことと矛盾する」と述べた。

 またルクセンブルクの外務大臣ジャン・アッセルボルンは、「トランプは大統領に就任したら、今とは違う態度を取ってほしい。世界最大の民主主義国が破壊的な方向に進むとしたら、残念だ」と語っている。

 ドイツの経済エネルギー大臣ジグマー・ガブリエルは、「米国が懲罰関税を導入した場合、米国の自動車産業も弱体化する。トランプが、ニューヨークに米国のクルマが少なすぎると嘆くならば、米国人はもっと良いクルマを作るべきだ」と反論した。