熊本地震では、地震発生とともに倒壊した家屋に閉じ込められた住民の救助活動などが迅速に行われたことを、テレビ報道で誰もが見た。その報道の説明は、いつも、「消防や警察、自衛隊の皆さんが……」にとどまっていた。それぞれのチームは、どのような体制で、どのような活動をしたのか。巨大災害発生直後、人命にかかわる救助活動はどのようなシステムのもとに行われるのか。おそらく現地で取材にあたっていた報道者たちもあまり知らなかったのだろうと思う(ひいては、一般の方々も)。
 それは、知っておくべきことと思う(彼らへの感謝、という意味でも)。

 そこで、いち早く現地入りした「緊急消防援助隊」のうち、北九州市消防局のチームの小清水勉隊長(54歳)にその活動を聞いたのは、熊本地震発生から4日目の4月18日(月)のことだった。

緊急消防援助隊、奔走の4日間

 この日、私は教鞭をとっている獨協大学での講義があったため、小清水さんへの電話インタビューの音声をライブで教室に流して、およそ300人の学生たちにも聞かせた(同様の試みを4回行ったので、それらも追って報告します)。

 今の若い世代の情報源やコミュニケーションはスマホが中心で、スマホ依存がきわめて大きい。それは、リアルな世界に触れる機会を減らしている。私が講義で目指しているのは、リアルな世界を自分の眼で見て自分の耳で聞き、自分ならではの認識を涵養することにある。緊急消防援助隊の隊長へのインタビューの“共聴”は、それをうながす一環でもあり、また、報道ではわからない大事な情報に目を向けさせたいという思いもあった。

 註:緊急消防援助隊は1995年の阪神・淡路大震災を教訓に、巨大災害時に、行政区分にこだわらず全国の消防機関が応援を迅速に行うことを目指し創設された(2004年4月、消防組織法による部隊となり約4000部隊が登録)。指揮支援部隊・都道府県隊指揮隊・消火部隊・救助部隊・救急部隊・後方支援部隊・特殊災害部隊・特殊装備部隊・航空部隊・水上部隊などの精鋭部隊で構成。(総務省消防庁の資料による)

 小清水さんは4月14日の地震発生直後に熊本へ向い、電話取材の前日、17日(日)の夜に、別部隊と交代し北九州市に戻ったばかりだったが、心よく語ってくれた。そのインタビューの一部を紹介する。また、北九州市消防局提供による時間順の活動記録を加えた。

北九州市緊急消防援助隊・小清水勉隊長、通常業務は北九州市八幡西消防署警防第三課担当課長(写真提供・北九州市消防局)
北九州市緊急消防援助隊・小清水勉隊長、通常業務は北九州市八幡西消防署警防第三課担当課長(写真提供・北九州市消防局)

山根:北九州市の緊急消防援助隊はどういう体制で熊本へ?

小清水:緊急を要するため先遣隊31名が向かいました、私がその隊長で。

山根:どういう役割を担って?

小清水:緊急消防援助隊は消防組織法によるものです。今回は、熊本での地震災害における現地での救助活動などに当たるため、消防庁長官からの求めにより、福岡県隊として北九州市消防局の緊急消防援助隊が派遣されたわけです。北九州市からは6台の消防車両がサイレンを鳴らし緊急走行で被災地に向かいましたが、九州の他地域の消防隊も同じように。

【2016年04月14日(木)の活動記録】
21:26 地震発生(熊本地方 震度7)
21:40 九州自動車道南関インター以南は通行止め
22:06 地震発生(熊本地方 震度6弱)
22:10 消防庁長官から都道府県知事へ緊急消防援助隊の出動の求め
22:20 福岡県から出動可能な隊の確認
22:30 熊本県から指揮支援隊の派遣要請があったと消防庁から連絡あり
22:34 北九州指揮支援隊は熊本市消防局へ向かえと福岡県から連絡あり
23:25 北九州指揮支援隊(1隊4人)が北九州市消防局を出発

山根:熊本では部隊はどこに集結?

小清水:熊本県の消防学校(上益城郡益城町惣領)です。ここに、消防車両だけで約150台、人員およそ600人が集まりましたよ。

山根:その約600人の指揮はどなたが担当?

小清水:全体活動の指揮は政令指定都市の消防本部がとることになっています。今回は九州各県から参集しましたので、福岡市消防局が全体の指揮をとり、我々北九州市の職員がサポートに入ったという形です。

各自治体から熊本に集結した緊急消防援助隊。熊本地震に出動した同隊はおよそ20都府県の500隊以上、2000名余を数えた。(写真提供・北九州市消防局)
各自治体から熊本に集結した緊急消防援助隊。熊本地震に出動した同隊はおよそ20都府県の500隊以上、2000名余を数えた。(写真提供・北九州市消防局)

次ページ 一軒一軒「声を出してください!」