消防ヘリの限界

山根:「消火用の水が不足」とも報じられていました。

山家:多くの消防ポンプ車が消火栓や防火水槽の水を同時に使えば、当然、水量は落ちます。消火栓は水道管につながっていますが、たとえば水道管の直径が75mmであれば、消防車1~2台分でぎりぎり。そこで、一般的には水道の配管を網の目状にして余裕をもたせています。しかし、燃えている面積が広く多くの消防車両が消火栓から一斉に水をとれば、水が不足し共倒れになります。こういう場合に備えて、水道水に頼らない防火水槽を設置、また池や川などの自然水利も利用することになっているんですが。

山根:海岸が近いので海水利用という選択肢は?

山家:糸魚川大火では火は海岸ぎりぎりまで燃え広がっていましたから、消防車両が海岸にまで行くのが難しかったのかもしれません。いずれにせよ、消防車両を数多く投入しても水がなければ消火に当たれないわけです。また、住宅密集地では建物と建物の間の路地は危険な状態なので、消防が入れなかったということもあったでしょう。

日本海の海岸が見える国道8号線沿いのエリア。海岸ぎりぎりまで燃えたことがわかる。(写真・山根一眞)
日本海の海岸が見える国道8号線沿いのエリア。海岸ぎりぎりまで燃えたことがわかる。(写真・山根一眞)
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山根:消防ヘリコプターによる上空からの消火はできなかった?

山家:消防ヘリによる消火活動は、日頃から訓練をしていなければ難しいです。また、日本の自治体消防が保有している消防ヘリは中型機なので、吊すバケットの水の量は約0.5トンと多くはないんです。強風時であれば、水を落としても風に流され消火の効果を得るのが難しいという面も。自衛隊の大型双発ヘリであれば、1回に6~8トンの水で空中消火が可能ですが。また、消防ヘリであっても離着陸時の風による安全基準があり、風速20mでは離陸判断が難しかったのではないでしょうか。

消防ヘリコプターの放水試験(北九州市消防局)。(写真・山根一眞)
消防ヘリコプターの放水試験(北九州市消防局)。(写真・山根一眞)

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