糸魚川市は消防に力を入れていた

山根:「消防力が劣っていたから大火になった」という無責任な意見がかなりありました。

山家:日本の消防力は、その地域の平時の年間平均風速が基準です。消火栓の数や消防車両の数もそれで決まります。もっとも年間平均風速が基準なので、爆弾低気圧やフェーン現象などの突発的な強風、台風などの際の火災発生では消防力が劣勢となるのはやむをえないんです。

山根:何十年に一度の大火を想定した消防体制は予算的にも人的にも無理?

山家:無理です。そこで、非常時はオペレーションで対処します。火災が乾燥や強風など基準を超えた条件下で発生すると、消防本部は通常は4台出動させる消防自動車を6~7台出す、といった初動対応をとります。また、異常気象時の火災に備えて、消防団の皆さんに即応体制を周知しておくことも大事。大規模火災では、応援協定を取り決めてある隣接市町村等の消防の支援を受けます。

この商店は出火元の隣家だが風上側にもかかわらず焼損していた。(写真・山根一眞)
この商店は出火元の隣家だが風上側にもかかわらず焼損していた。(写真・山根一眞)
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山根:糸魚川市は人口が約4万人で保有消防車両が9両、消防職員は90名です。この体制は十分だった?

山家:平時の消防体制としては国の整備指針を満たしています。人口約4万人であれば、消防士は50~60人が平均的な配置数と思われますが、糸魚川市はそれより多い。過去の災害履歴や管轄面積の大きさなどを反映しているのでは。

山根:消防局と消防団を合わせた消火体制は、火災発生日の12月22日に消防車126両、活動人員が1005名、翌23日が同105両、949人で、「鎮圧」までに10時間30分。「鎮火」は23日の16時30分でした。周辺自治体からさらなる応援があってもよかったのでは?

山家:いや、隣接自治体にも同じフェーン現象による強風が吹いていたはずですから、自分の町で火災が発生した場合に必要な消防力まで出せなかったはずです。こういう場合は、より遠い自治体に応援を要請するので、時間がかかります。どこも車両や人員が余っているわけではないですからね。大火では周辺部で交通渋滞も発生するため、消防車両の現場到着が著しく遅れることもあります。

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