「暴君トランプ」と「狂犬マティス」は中国の挑発をいなせるのか(写真:AP/アフロ)

 中国の人民解放軍海軍が南シナ海で米軍の無人潜水探査機(ドローン)を「違法に奪取」した。12月15日のことである。米国側はすぐさま返還を要求、18日には中国側も返還に応じることを決定したが、いったい中国側は何を考えて、このような大胆な真似をしたのだろうか。今後の米中関係の行方を占ううえでも、気になるところだ。

フィリピンと中国の係争水域で

 米国防総省の発表では、15日、アメリカ海軍の海洋調査船「バウディッチ」が南シナ海のフィリピン・ルソン島沖、スービック湾から北西93キロの地点で、無人潜水探査機(ドローン)2機による海洋調査を実施、探査機を回収しようとしたところ、中国海軍の潜水艦救難艦がボートを出して1機を奪ったという。バウディッチは無線で返還を要請したが、救難艦は応答せずに探査機を持ち去った。

 米国側によればドローンは海水の塩分濃度や透明度などを調査するものだが、これは潜水艦航行時のソナーデータに役立つ情報でもある。潜水艦の航行、作戦に必要とされる情報といえば、軍事情報になるが、機密というほどのものはない。国防総省の発表でも、今回の調査は、民間用のドローンを使って非機密情報を収集していたという。

 無断でこのドローンを拿捕した中国国防部は「中国海軍は15日午後、南シナ海海域で正体不明の装置を発見し、船舶の航行の安全と人員の安全を守るために、救難艦の責務としてこの装置の識別検査をしたのだ」と主張した。

 だが、目の前に米海軍の調査船があり、無線で返還を呼び掛けているのに持ち去ったとなれば、この主張も口実にすぎないとわかる。中国国防部側は識別検査の結果、無人潜水探査機であると判明したので米国に返還すると決定した、と説明。「中国側は米国側とずっと連絡を保っているのに、米国側が一方的に問題を公開し、騒ぎ出したのは不適当であり、問題をスムーズに解決するのに不利となった。我々はこのことに遺憾を表明する」と開き直った。

 さらに中国国防部は「強調すべきことは、長年、米軍は頻繁に中国当面海域で偵察や軍事測量を行ってきているが、中国はこのことには断固反対しており、この種の活動を停止することを米国側に要求する。中国側は引き続き米国側のこうした活動に対し警戒を維持し、必要な措置をもって対応する」とけん制した。

 米海軍海洋調査船が寄港していたスービック湾沖という現場は、本来フィリピンの排他的経済水域内だが、スービック湾西200キロの地点にあるスカボロー礁はフィリピン、中国が領有権を争う係争地である。米国側はこの周辺海域を国際水域、つまり公海や自由海に準ずるものとして認識しているが、中国側にすれば現場は中国の排他的経済水域ということになる。排他的経済水域内の科学目的調査は沿海国への「妥当な考慮」が必要となっている。

 この海域の認識はともかく、軍の船が領海領空のボーダーに近いところで調査を行えば、沿海国にとっては苛立つものだし、情報収集艦が接続水域や領海に入ってこないように、追尾し、監視して追い払おうともするだろう。中国の情報収集艦もしばしば尖閣諸島などの接続水域に入り、ときに領海を横切ることもあったので、日本もきりきりしている。ただ、日本は抗議するが、実力行使を行ったことはない。