
米中首脳会談の裏側で進行していた中国最大手通信技術メーカー・華為技術の副会長兼CFO(最高財務責任者)孟晩舟の逮捕で、米中貿易戦争が一時休戦かという期待は完全に裏切られた。90日の猶予を得るために妥協に妥協を重ねた中国・国家主席の習近平は大いにメンツをつぶされ、世界の株式市場では中国関連株が総崩れ。米大統領ドナルド・トランプはホワイトハウスを通じて、首脳会談中に孟晩舟が逮捕されたことは知らなかったと公表し、カナダ首相のトルドーも政治的干渉はない、としているが、本当だろうか。ロイターによれば大統領補佐官(国家安全保障担当)のボルトンは事前に司法当局から聞いて知っていたらしい。ボルトンが知っていてトランプが知らないなんてことがあるだろうか。とすると、このタイミングで孟晩舟の逮捕に踏み切った米国側の狙いは? 華為ショックの背後に垣間見える米国の意図と、米中関係の今後の展開を読んでみたい。
カナダ司法当局は12月5日、華為の副会長でCFOの孟晩舟を米国の要請で逮捕したと発表した。5日付けのカナダ紙グローブ&メールの特ダネを受けての公表だった。逮捕日は12月1日、つまりアルゼンチン・ブエノスアイレスで行われた米中首脳会談で、米国が来年1月1日に実施予定の中国製輸入品2000億ドル分に対する追加関税引き上げを90日猶予するということで合意したと発表された日だ。世界市場はこれで米中貿易戦争はひとまず休戦と胸をなでおろしたのだが、その裏側で米国は習近平を追いつめる最高の切り札を切っていたわけだ。
逮捕容疑は孟晩舟本人の要請もあって当初公表されなかった。米国は孟晩舟の身柄の引き渡しをカナダ政府に求めているが、カナダの中国大使館は「これは人権侵害だ!」と強烈な抗議声明を即日発表。中国外交部は「カナダであれ米国であれ、彼女が両国の法律に違反している証拠はいまだ中国側に提示されていない」として、即時釈放と孟晩舟の合法的権利を守るように要請している。
7日に行われた保釈審理では、孟晩舟は華為の香港の子会社を通じて、米国のイラン制裁に違反したという。これまでの報道を総合すると、少なくとも130万ユーロのヒューレットパッカード製技術を使用したコンピューター設備をイランのモバイルテレコミュニケーション(MCI)に販売した容疑があり、このとき制裁違反を隠すためにアメリカの金融機関に虚偽の報告を行った詐欺容疑を検察側は主張している。孟晩舟は2008年2月から2009年4月までその子会社の取締役を務めており、孟晩舟が指示を出していたと見られている。
この容疑が事実なら米国に引き渡されれば、最悪30年の懲役刑もありうるらしい。カナダ司法当局は逃亡の恐れありとして保釈に反対している。保釈されるとすれば彼女の中国・香港パスポートの放棄など12項目の条件を満たすことと1400万カナダドルの保釈金が必要。孟晩舟の弁護士は彼女が4人の子供の母親であること、高血圧や睡眠窒息症など健康上に問題があることなどを前面に出して保釈を勝ち取りたいようだ。華為側は孟晩舟が違法行為に関与しているとは考えていないとの見解を示している。
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