「失脚160人、自殺17人以上」の異常

 張陽らが本当に“クーデター”を計画していたかどうかはさておき、確実に一つ言えることは、張陽も房峰輝も、習近平の軍制改革には内心強い不満を抱いていたらしい。それぞれ総政治部主任、総参謀部参謀長という軍内で極めて強い権限を持つ地位から、中央軍事委員会主席の習近平の秘書レベルにまで事実上格下げになったわけだから、面白いわけがない。

 しかも、彼らの直属の上司の習近平は左手で敬礼してしまう軍のしきたりに無知な人間だ。こうした軍内の不満は、実のところ、積もりに積もって、軍の機能にも影響するほどだとも言われている。中央軍事委員会のメンバーが11人から大幅に縮小した7人になったのは、習近平が望んで「スリム化」したわけでなく、「粛清」のし過ぎで、経験と地位ともども中央軍事委員会入りするに足る高級将校が足りなくなった、とか。

 香港誌「前哨」10月号によれば、二人は軍の実力派首脳として、習近平の徐才厚・郭伯雄派閥の将校の徹底排除に抵抗したという。このことが、習近平の逆鱗にふれたようだ。だが、これは二人が徐才厚・郭伯雄派閥として腐敗していたための保身の言動ではなく、むしろ軍内の不満を代弁し、部下たちを守ろうとした、というふうにとる方が普通だろう。軍内で過去5年に失脚させられた高級将校は160人。うち少将以上で自殺した者が、17人以上。おそらくもっと増える。戦闘以外で軍の高級将校がこれほど多く死ぬのは明らかに異常である。

 習近平はこんな無茶な粛清を続けていて、本当に軍権を掌握できるのだろうか。今世紀半ばに世界一流の人民軍隊建設を実現すると打ち出す習近平政権だが、世界一流どころか、“クーデター”を絶対起こさないと安心できる、政権に不満を持たない軍隊にすることがまず課題である気がする。

 中国共産党の第19回党大会で、習近平が徹底した共産党独裁を目指していると明らかになった。自分の姿を毛沢東に重ねる絶対的指導者として歩もうとしている次の5年は、国際社会をも巻き込む大きな悲劇をもたらすだろう。党中央の指導(=自分の意見)に抵抗するものは排除し、人民の統制と監視を強化、合弁・民間企業まで従わせ、中国の強国化、強軍化でアジアを支配。日本の安全保障や経済問題は、どんな影響を受けるのか、詳細をレポートする。
徳間書店 2017年11月29日刊