「裏で汚職」で隠蔽?

 ここで房峰輝の失脚にまつわる一つの噂が思い出される。2017年5月以降のブータン・中国の係争地ドクラム高地で中印両軍がにらみ合い、一触即発の危機が生じたのは、房峰輝の命令による解放軍のドクラム高地での軍用道路建設がきっかけで、しかも彼は中印撤退協定の調印にも最後まで抵抗していたがため、参謀長を解任された、という噂である。習近平は、房峰輝に謀反の心ありと疑ったといわれる。つまり、胡錦濤派軍首脳で最も力のある房峰輝、張陽の二人が連携して、中印国境危機に乗じて、政変を仕掛けようと準備をしていたのではないか、という憶測がある。

 また別の香港筋は、2016年、2017年と北京をはじめ中国全土頻発している退役軍人デモを裏で画策していたのは、張陽、房峰輝の二人で、退役軍人デモに乗じて政変を計画していたという。

 もし“クーデター”説が正しいなら、この“クーデター”計画には、真の首謀者たる党内最高指導部か長老の後ろ盾があり、張陽が自殺させられたのは、その秘密を自白させないためではないか、という疑いが出てくる。となると、房峰輝も今後「自殺させられる」可能性がある。

 こうした政変疑惑とは別に、中国国内報道では、張陽は徐才厚閥で、房峰輝は郭伯雄(失脚済)と利益供与関係にあり、二人ともひどく腐敗しており、だから、失脚したともっぱら喧伝されている。

 張陽は2014年以降、解放軍報への寄稿や軍内の公式会議の場で実に13回も徐才厚、郭伯雄を批判している。張陽が江沢民のお気に入りの贾廷安を押しのけて総政治部主任の座に就いたのは、間違いなく南部大雪害の活躍を強く推した胡錦濤の力であり、張陽はこの後、ことあるごとに胡錦濤派としての忠誠を表明してきた。

 徐才厚は軍内の江沢民の代理人であり、胡錦濤の軍権掌握をずっと妨害してきた人物であり、構図的には江沢民派の徐才厚とは対立関係にあったはずだ。張陽と徐才厚が結託していた、という話には無理がないか? だが中国メディアは、口先では徐才厚らを批判しておきながら、裏では汚職でつながっている、と報じている。この汚職説は、張陽と房峰輝の本当の失脚理由を隠蔽するための目くらまし報道であると私は見ている。