もうひとつの提案は、「米国の指導者として、国家の根本利益とは何かをはっきりと確認すべきである」ということらしい。米中間にある紛争の種だけに視線を遮られず、どのような影響があるかという角度から物事を見るように、という。

 「大統領としてすべきは、両国間の貿易問題や南シナ海の問題についてだけでなく、ほかのその他すべての部分についての対立議論の進行や決定についても、大統領として信頼するキーマンたちとよく問題を話し合うことだ。我々の目標は何なのか、どのように結果を得るのか、何を防ぐべきなのか。そのあとで中国側の指導者と対話の展開を試みるのがいい。そうでないと、おおむねある危険に陥る。すなわち、現在の米中の貿易問題のように、対立ばかりが表面化し、それが正確な視野の妨げになる」

 ようするに、中国とは対立だけでなく、相互利益を得ることも視野に入れて、中国とのコネがある人間を政権内に組み入れ、争いよりも協力を優先させよ、と強く勧めたようである。キッシンジャーとしては、中国との協力関係は米国の国家利益にかなう、ということである。

トランプと蔡英文、電話会談の意味

 キッシンジャー自身が、最近のインタビューなどでもこう述べている。「習近平とはパートナーシップを築き、対抗せず、現実的なウィンウィンでいくことに賛成する。今よりも信頼できる国際秩序を打ち立てる努力をし、さらに安定的なバランスのとれた国際秩序のもと、米国がいかに中国のようなウルトラ級大国と対峙するかは一つの巨大な挑戦である。目下のように、二つの大国が複雑に影響しあうような経験はこれまでになく、どのようにうまくこの関係を処理していくかは政治的に巨大な挑戦である」(ボイスオブアメリカ)。こうした発言から考えるにトランプに対しては中国との対立をエスカレートさせないように釘をさしたようであるし、中国に対してはトランプの危険性を警告したのではないか。ちなみに、キッシンジャーが指摘する米中の協力領域はシルクロード構想、アフガン問題及び海賊退治などの国際平和維持行動などだ。

 そう仮定すると、キッシンジャー訪中にあわせたトランプ蔡英文電話協議は、トランプサイドの、キッシンジャーのアドバイスに対するある種の答え、というふうにうがってみることもできる。

 トランプと蔡英文の電話会談は2日夜11時(台湾時間=北京時間)、蔡英文側からの要望で行われたという。