米中貿易戦争、再燃の可能性

 これは米国や日本らの中国に国家安全を脅かされる国々にとってはむしろ残念なことかもしれない。なぜなら中国の改革開放路線(経済の資本主義化、自由主義化)の最大の障害となっているのは習近平自身なのだ。習近平は未だアンチ鄧小平路線であり、鄧小平路線が継続すればいずれ共産党体制は崩壊すると考え、共産党がより市場や民営企業を含めた経済コントロールを強化する国家資本主義路線に転向することが体制維持に絶対必要と考えている。習近平が想定するのは、資本主義や民主主義とは異なる中国発の新たな経済の枠組みや国際秩序でもって人類運命共同体を構築する世界観だ。米国や国際社会の望みがこれを阻止し、従来の米国的経済秩序、国際スタンダードに従う方向での中国の発展であるなら、習近平からより鄧小平路線に忠実な指導者に代わることを期待する以外ない。

 なので、米中新冷戦構造は非常に長い今後の国際社会の基本構造となるだろうが、その第一フェーズである米中貿易戦争の決着点は習近平の実質上の引退ではないか、といううっすらとした期待を個人的にもっていたが、追加関税の90日間猶予はこの可能性をさらに低くしたことになる。

 さて今後の見通しだが、3カ月後に米中貿易戦争はおそらく再燃する。なぜなら中国が米国と違う新たな国際秩序を打ち建てるという野望を放棄しないからだ。そのためには、半導体その他の米国が保有する核心的技術の国内移転を諦めることはないし、米国に対する産業スパイもサイバーを通じた情報窃取も一層励むことになる。なによりタイミング的に全人代直前であり、習近平としては一寸の妥協も示せない。トランプ側が譲歩しない限り、貿易戦争は再開し、より激しく、長期化することになるだろう。その決着が2020年の米国大統領選直前まで持ち越されるとしたら、それはトランプ政権が維持されるか、あるいは習近平政権が維持されるか、という結果で判定されるかもしれない。

【新刊】習近平王朝の危険な野望 ―毛沢東・鄧小平を凌駕しようとする独裁者

 2017年10月に行われた中国共産党大会。政治局常務委員の7人“チャイナセブン”が発表されたが、新指導部入りが噂された陳敏爾、胡春華の名前はなかった。期待の若手ホープたちはなぜ漏れたのか。また、反腐敗キャンペーンで習近平の右腕として辣腕をふるった王岐山が外れたのはなぜか。ますます独裁の色を強める習近平の、日本と世界にとって危険な野望を明らかにする。
さくら舎 2018年1月18日刊