中国は目下、投資戦略を転換していこうとしている。かつては経済発展計画にそってエネルギーや基礎インフラ分野への投資を、国家の基金を通じて実施するというスタイルだった。これをサービス、高付加価値産業分野へ、民間資本で行っていく方向にもっていきたい。このためにはプライベートエイクイティファンド(PE)や機関投資家の役割を増強していきたい考えがあり、自由貿易協定や多極主義の拡大が中国の投資戦略のこうした転換に利すると考えている。

 もう一つの狙いは人民元の国際化だ。無事、特別引出権(SDR)入りを果たした人民元だが、実際のところ人民元に対する信頼が向上したわけではない。中国の投資・貿易政策と人民元国際化プロセスは不可分であり、中国としては南米国家との貿易協定拡大や、FTAAPへの推進を人民元国際化に利用していきたい考えがある。

市場経済国ではない国に市場を主導できるか

 要するに人民元による決済、人民元による投資が可能な経済貿易圏の形成だ。米国の国際社会の影響力は軍事と通貨・金融が担保している。米ドル一極の基軸通貨体制を覆すことが、中国の覇権を実現するためには欠かせない。AIIBの設立も人民元のSDR入りもその目標に向かっての布石である。通貨を制するものが世界を制する、グローバリズムの頂点に立ち、国際社会のルールメーカーになるには、海洋覇権などと並んで通貨覇権を実現することであると考えているわけだ。

 だが、中国の野心は野心として、中国自身がグローバル経済の秩序の中心となる条件を備えていると言えるだろうか。

 中国は、いまだ市場経済国ではない。そして実際の経済政策は自由主義経済とは違う方向に動いている。中国が目指すのは国家資本主義、つまり国家、共産党政府が完全に指導・コントロールできる資本主義だ。小国ならいざ知らず、あの規模の市場を抱える中国に、そんなことが可能なのか。企業の利益よりも、共産党の政治的判断が優先され、政府は市場ルールの頭越しに行政指導を入れてくる。しかも、そういう共産党指導の資本主義を周辺国に拡大しようという考えで、国家資本輸出主義、などという言い方もある。

 一般に自由貿易を主導するなら自由市場経済と民主的政治体制が必要だと思われてきた。だが、中国式グローバリズムはそうではなく、共産党がコントロールできる市場経済と、一党独裁体制のままで自由貿易の主導者となろうというわけだ。

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