米主導のTPPに対して、RCEPは最初に中国が言い出し、中国が主導してきた。ASEANが日中韓印豪NZら周辺諸国と個別に結んできた自由貿易協定をまとめるという考えで、目下16か国が参加している。中国にしてみれば、中国包囲網形成という目的のTPPに対抗するという政治的意味合いもある。RCEPはTPPほど関税の撤廃を要求しておらず、また環境規制なども特に設けていないことから、日本の中ではTPPよりRCEPの方を支持する人も少なくなかった。ただ中国の脅威を認識しはじめた日本、オーストラリアをはじめ、RCEPとTPP両方に参加する7か国はTPPを優先させており、2016年内発効予定だったのが延期されている。

 FTAAPはRCEPとTPPの両方を包括するAPEC地域の自由貿易圏構想だ。これは貿易摩擦が最も激しく対立している米中をともに含むことになる。実現は簡単ではないが、米中ともにこの貿易圏で自らが主導権をとることを目標にしており、日米はTPPをベースにしてFTAAPを実現したいと考え、中国はRCEPをベースにしてFTAAPを考えていた。2014年の北京APECでそのロードマップが採択された。

ペルー、チリ、エクアドル…米国の裏庭を刈る

 こういう状況で、トランプ政権の米国がTPPを降りるとなると、RCEPがFTAAPのベースになる展望が開けてくる。つまりアジア太平洋貿易圏の経済秩序が中国主導で形成される可能性がでてくる。

 習近平はAPEC首脳会議に先立って行われたAPEC工商関連サミットで「アジア太平洋地域は規定路線を歩み続け、グローバル経済により多くの活力をもたらさねばならない」「中国は世界に対し門戸を開放している、この門はさらに大きく開かれる」と強調し、FTAAP構築こそ、アジア太平洋地域の悠久の繁栄をもたらすために戦略的に重要な意義を持つと強調し、FTAAP推進を呼びかけた。

 TPP参加国のペルー、チリはさっそく、中国との自由貿易促進で一致。チリのバチェレ大統領は早期にアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加盟したいとも表明している。TPP参加国でもAPEC加盟国でもないが、習近平は23日までの南米歴訪でエクアドルにも初訪問。両国関係を全面的戦略的パートナシップ関係と位置付け、金融、インフラ面での20の協定に調印している。トランプの保護貿易主義的政策に乗じて、中国式グローバル経済圏は米国の裏庭・中南米の取り込みを加速していこうとしている。

 習近平がリマでアピールしたことは、中国が大幅に外資参入制限を緩和し、APECメンバーの間でハイレベルな準自由貿易圏を設立し、中国が国際標準にあった商業環境を確保し、一つのフェアな市場を形成するのだという点だ。では、中国はどういった貿易経済秩序を打ち立てようとしているのか。

次ページ 市場経済国ではない国に市場を主導できるか