習近平はエクアドルを初訪問。ペルー、チリも歴訪し、米国の裏庭・中南米の取り込みを狙う(写真:AP/アフロ)

 米国のトランプは政権発足後すぐさまTPPを離脱すると言明した。本当にそうなるのか、実際のところわからない。たしか副大統領に指名されているマイク・ペンスはTPP推進派だ。TPPは経済的な意味以上に、米国にとって中国経済覇権の拡大封じ込めという外交的意味が大きかった。

 米国はこれまで中国経済のグローバル化を後押ししてきた。中国が米国と国際秩序に挑戦しない国だと思っていたからだ。経済がグローバル化すれば、中国のような国も市場経済国となり、政治も民主化していくと考えたのだ。だが習近平政権になって、その本心が米国に成り代わって国際・経済秩序のルールメーカーになりたいのだ、という野心であることに気付き始めた。中国は、民主化するつもりもなく、米国とは全く違う価値基準や秩序をもって、国際社会を米国と二分していこうというG2時代を夢見ている。そう認識したオバマ政権はそれまでの親中路線を転換し、中国包囲戦略に切り替えた。

 それがアジアリバランス政策であり、TPPは単なる自由貿易の枠組みから、政治的な意味を持つようになった。少なくとも、中国の官僚、知識人たちはそう考えていたので、トランプのTPP離脱宣言は、中国にとって朗報である。

 ペルー・リマで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議で、習近平は、早速中国が世界貿易をリードしていく強い姿勢を訴え、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の早期妥結、RCEPを土台にAPEC全体の自由貿易圏となるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構築に意欲を見せた。これを、米国中心の経済・貿易秩序を中国主導の経済貿易秩序に変えていく好機とらえたのだ。

 だが、いまだ市場経済国認定もされていない中国が、グローバル経済を米国に代わって主導する国家になりうるのだろうか。中国が目指す、中国式グローバル経済の青写真を考えてみたい。

米中の立場が逆転してきたかのような錯覚

 トランプは、選挙運動中から保護貿易政策を打ち出しており、中国に対しては最高45%の懲罰関税をかけるとも言ってきた。これに対して中国側は、そうなれば米国をWTO(世界貿易機関)に提訴する、と言っている。トランプサイドは、もし中国に対する懲罰関税がWTO違反になるならばWTO離脱もありうるとまで、言っていた。これまで、中国が不当廉売などのWTO違反を米国サイドに訴えられるケースが多かったことを考えれば、まるで米中の立場が逆転してきたかのような錯覚を覚える。

 トランプはさらに北米自由貿易協定(NAFTA)離脱にも言及している。メキシコ製品に対する関税を35%に引き上げるとか、メキシコ国境に移民流入の壁を建設するとか、かなりの暴言も吐いた。