中国の軍事支援によって、独立闘争を勝ち抜き政権を樹立し、大統領の座についたムガベは、実のところこれまでは中国にとって非常に都合のよい大統領だった。中国がジンバブエに巨額投資を行えば、ムガベはその代償に金、プラチナ、ダイヤモンド鉱山の権利を中国の欲しいままに許した。ムガベは事実上、中国によるジンバブエの植民地化を手伝ってきたともいえる。巨額投資の見返りに土地、鉱山、資源などの侵食を続けてきた中国は2015年、4000万ドルというジンバブエの債務を帳消しにする代わりに人民元をジンバブエの法定通貨の一つに認めさせ、国家の基幹である通貨まで奪ってしまった。

 だが、そんなムガベも高齢となり、しかもその政治的無能と長期独裁による国民からの人気の低さに、中国共産党内にもポスト・ムガベを考える空気が流れていた。それに気づいたムガベが、今度は習近平に対して不信感を募らせ始め、習近平のメンツを潰すような言動を次々とするようになった。

ダイヤモンド採掘国有化に激怒

 そうして関係がだんだん険悪になってきたころ、習近平を激怒させた決定打が2016年3月にムガベが突如決めたダイヤモンド採掘企業の国有化政策である。外国の採掘企業によるダイヤモンド産業は、ジンバブエが本来得るはずの約130億ドルの潜在的収入を盗んでいる、として、外国資本によるダイヤモンド採掘企業を政府がすべて接収することを決めた。この中には当然中国企業も含まれていた。

 ジンバブエ東部のマランゲは世界最大規模のダイヤモンド鉱山で、その埋蔵量は全世界の4分の1以上ともいわれている。マランゲはムガベ政権が2008年に軍と警察力を行使し、約400人を虐殺した末、その採掘権を奪取したことで知られる血塗られたダイヤモンド鉱山。このときムガベ政権に軍事協力していた中国解放軍が直接、このダイヤ採掘と治安維持に加担していたと、2010年9月当時の英デイリーポストの記者が告発している。このダイヤモンド鉱山には解放軍の秘密飛行場があり、採掘したダイヤをそのまま中国に輸送していたとも。ムガベ政権への見返りは解放軍の武器であったという。この武器がムガベ政権維持に必要な軍事力を支えていた。