(写真:AP/アフロ)

 先週、チベットの人権擁護活動を支援する国際NGO・インターナショナルキャンペーン・フォー・チベット(ICT)の欧州連合政策担当のヴィンセント・ミッテンが東京の日本外国特派員協会で、「ウイグル人、チベット人に及ぶ中国の反テロ法の危険」と題した報告書について記者会見を行った。残念ながら私はこの記者会見は参加しなかったのだが、前夜に在東京の研究者やジャーナリストたちと一緒に、彼から直接話を聞く機会を得た。

 2016年1月に施行された反テロ法は、国家安全法、反外国NGO管理法、反スパイ法などともに中国国内の治安維持強化の要となっている。だが、この真の目的は、テロの撲滅、予防ではなく、中国国内における反共産党体制派を弾圧し、チベット人やウイグル人らマイノリティを迫害するための口実となっているのが、現実だ。しかも、中国の経済的影響力、そして米国のトランプ現象に象徴される自国第一主義の世界的潮流によって、世界の先進国がそういった現実を見ないふりするようになってきのだ、とミッテンは訴えている。

「テロ報道禁止」の危険

 この報告書は、ICTと国際人権連盟(FIDH)らによる討議や分析によって浮彫りになった中国反テロ法が内包するリスクについて、まとめられている。報告書自体はICTのホームページからダウンロードでき、また外国特派員協会の記者会見もYOUTUBEなどでアップされているので興味をもった人はぜひ見てほしい。

 反テロ法は2015年1月に施行された新国家安全法に続いて、テロリストを対象に特化した法律として2016年1月に施行。施行当時は、海外のIT企業に対しても中国司法当局が要請すれば暗号解読を支援せねばならないといった内容などが企業の経済活動を阻害するのではないかという議論も起きた。だが、その本質は反体制派の勢力をテロリストと位置付けて殲滅することの正当性を担保するための立法である。

 この法律の大きな問題点の一つは、テロの報道に対しては、手口の模倣を防ぐという建前で詳細に報道することを禁じていることだ。当局の対応も、テロリストに関する情報も、事前許可がなければ一切報道することが禁止されている。つまり、報道によって事件がテロリズムであるかという検証も行えず、また当局がどのような手法で“テロリスト”たちを殲滅したか、その手法に正当性があったのかなかったのかも検証できない。また反テロ作戦のために海外に解放軍や武装警察を派遣することも同法によって可能になっている。