中国でコア技術が生まれにくい理由

 その一方で、ノーベル賞を受賞できるレベルの研究や発見、地道な研究を重ねた末にたどり着けるコア技術はなかなか中国で生まれない。それには自由にものを考えられる環境が必要だからだろう。中国で発展が進むのはあくまで応用科学の方、と中国のアナリストや専門家たちも言う。

 そうなると中国のハイテク産業が世界でどこよりも先端をいき、巨大なビジネスチャンスを生む市場になる可能性もあれば、いつまでたってもコアな技術で自由社会を追い越せるだけの実力は持てず、早晩、米国にハイテク産業がことごとく潰されて、長期的な経済停滞期に突入するかもしれない。ただ言えるのは、どこの国よりも人がコントロールされ、自由にものを考える機会を奪われた息苦しい世界になるのではないか。

 中国のハイテク応用技術は、おおむね人民を信じず、人民から判断権限を奪い、支配と監視を強化することでしか安定が得られない、という発想のもとに開発されている気がする。

 さて、日本企業にはぜひ中国ハイテク市場で利益を挙げてほしいと私は願っている。だが、中国と技術協力をするとき、その技術が人を支配するためではなく、自由な人間に奉仕するものであるという視点だけは、失ってほしくない、と思う。たとえ、どんなに“民度”の低い人たちであっても、一方的に支配されるような社会は異常なのだ。

【新刊】習近平王朝の危険な野望 ―毛沢東・鄧小平を凌駕しようとする独裁者

 2017年10月に行われた中国共産党大会。政治局常務委員の7人“チャイナセブン”が発表されたが、新指導部入りが噂された陳敏爾、胡春華の名前はなかった。期待の若手ホープたちはなぜ漏れたのか。また、反腐敗キャンペーンで習近平の右腕として辣腕をふるった王岐山が外れたのはなぜか。ますます独裁の色を強める習近平の、日本と世界にとって危険な野望を明らかにする。
さくら舎 2018年1月18日刊