レベル4以上の自動運転に必要な技術というのは、中国国産だけではまだ賄えない。百度の自動運転システム研究プロジェクト・アポロ計画(国家プロジェクト認定)はざっくり130以上の企業が関与しているし、その中にはフォード、ボルボ、ダイムラー、エヌビディア、インテル、マイクロソフトといった多国籍企業も50以上含まれる。日本のトヨタやホンダも関わっている。コアの半導体はインテル、エヌビディアが提供している。

 米貿易戦争が派手に展開されて、米国としては全力で中国の自動運転技術も含むハイテク技術国産化戦略「中国製造2025」を潰そうとしているとも見えるのだが、実際のところこの戦略を支えているのも米国を含む多国籍企業で、トランプ政権がいかに怒ってみせても簡単にアシ抜けできないぐらいのがっつりした関わり方だ。日本に至っては政府自身がこうしたハイテク企業に日本の技術系企業が関わることが、国家の安全保障問題に直結するという意識すらないかもしれない。中国は当然こうした合弁企業の技術は、すでに中国のもの、という考え方だ。

中国人知識人が抱く危機感

 こういう現状に対して一番危機感を持っているのは、やはり中国人知識人ではないか、と私は感じている。政治プロパガンダとして「中国のハイテクはすごい!」とメディアが宣伝する一方で、シンクタンクや企業関係者に聞けば、彼らは必ずしも中国のハイテク開発に対して楽観的ではない。

 米国次第で「中国製造2025」が潰される危険があることも分かっている。米国政府が、中国大手電信機器メーカー・ZTEに見せしめ的に米国産半導体輸出を一時停止して以降、この危機感は一層強くなっている。中国は前にもまして半導体開発のための技術者集めや研究に金をつぎ込むよう指示。「自力更生」(毛沢東が打ち出した政治方針)を今更引き合いに出して習近平は、半導体を中心とするコア技術の完全国産化を急がせている。

 自動運転用AI向け半導体「崑崙」(百度)や「昇騰310」(華為技術)などの発表が最近相次いだのも、そうした背景を受けてのこと。華為はこの10年売上の10~15%(累計4000億元)と、あり得ないペースで研究開発費をつぎ込んできているし、今年に限っていえば1000億元を、半導体を中心とする研究開発に突っ込んだと報じられている。

 米国が「中国製造2025」をひねり潰すのが先か、中国がこの圧力に耐え抜いて「自力更生」するのが先か、それが米中貿易戦争に象徴される米中新冷戦の行方を決めるカギ、ということになる。そうなると10年単位の長期戦になる可能性もあろう。