懸案解決に「長期安定」望む?

 ダナンAPEC前、都内で在日中国人学者をゲストスピーカーに招いた勉強会があった。頻繁に北京に赴き中国内政事情にもそれなりに、詳しいその学者によれば、習近平政権は最近、安倍政権の長期安定を望んでいる、という。10月の総選挙も自民党圧勝を期待していたという。

 それはなぜなのかというと、一つには、習近平の周辺には日本を重視するように進言する声はもともとあった、ということ。習近平自身に、無事に第19回党大会を乗り越えたことで少し自信が出てきて、そうした意見に耳を傾ける余裕が出てきたこと。習近平政権二期目としては、ライバルは米国であり、いずれ米中対立が先鋭化するタイミングが来ると予想されるが、その時までに日本を米国から引き離しておく必要がある。そのためには日本を中国サイドに引き寄せる努力をすべきだ、という考えに傾斜してきていることなどが背景にあるらしい。

 さらに言えば、日中関係を改善する上で、懸案の海空連絡メカニズムや東シナ海ガス田開発の問題について、日中は込み入った交渉をしなければならないが、そういう実務的交渉は安倍政権のような継続性のある政権の方がやりやすい。

 2012年6月に大枠で合意した海空連絡メカニズム実施に向けた協議は尖閣国有化問題で一時中断した後、2014年11月に協議再開で合意した。だが、尖閣周辺海域をこのメカニズムに組み入れるか入れないか、入れるとすれば、どういう扱いなのかで日中の意見は対立し、今に至っている。

 最終的には文書に使われる文言や定義の問題で、その最後の交渉の大詰めに入っているようだが、こうした双方が国家利益をかけた込み入った実務交渉ができるのは、今のところ安倍政権しかない、とその学者は指摘した。中国サイドにしてみれば、日中関係の悪化のきっかけは、実務能力の不足した民主党政権の“政治的空白”で起きているので、もともと野党に対する信頼度は低いのだろう。

 ただ、こうした意見はすべて中国サイドの見方、立場から発せられている。果たしてそれが本音なのか、というと中国の場合、公式に喧伝されていることとほぼ真逆のことが実は本音というパターンが多い。なので、こうした中国人識者の見方を反対側から透かして見てみることも必要だ。