長征5号プロジェクトはいわゆる863計画(1986年3月の国家ハイテク発展研究計画)に従って、2001年2月、江沢民政権時代に正式にスタートし、足かけ15年、約45億元をかけて実現にこぎつけた。総設計責任者は1967年生まれの李東(航天科技集団一院)。長征5号の開発、研究、そして打ち上げにかかわっているのは、ポスト文革世代である60后から80后までの若手技術者、研究者たちであり、17歳で1999年の神舟1号の打ち上げを見て、宇宙開発の路を志した80后の若手エンジニアが注目を集めたりもした。

 長征5号は160分の発射遅延はあったものの、初の発射をみごと成功させ、これらメードイン中国の先端技術の信頼性、中国ロケット研究の成熟ぶりを世界に見せつけることに成功した。今の時点では、中国の宇宙開発の実力について、旧ソ連の物まねであるとか、米国などと比べて大きく遅れをとっていると考える人は、国内外にほとんどいなくなっただろう。

「中国クオリティ」の概念を塗り替える

 全世界の運搬ロケットの発射成功率は平均で91.5%、米国で93.1%、ロシアで94.9%。中国の長征シリーズロケットの発射成功率は97%。もともと中国のロケット発射技術は決して低くない。これまで米ロのロケット発射成功率が中国に劣っていた理由としては、中国よりも大型ロケットが多く、技術難度も高度であったからで、中国は打ち上げやすいものを数こなして実績を重ねてきたと言われてきた。だが、今回の長征5号発射、中国も米国並みの大型ロケットを、高難度の技術を用いて打ち上げたことで、中国宇宙開発における「中国クオリティ」の概念を塗り替える事件であるともいえる。

 こうした中国の宇宙開発は習近平政権になってから加速している。特に、中国の宇宙開発元年とされた1956年10月の国防部第五研究院(中国最初のミサイル研究機関)創設からちょうど60年という節目の今年に合わせて、宇宙開発の成果を人民に知らしめるイベントが集中した。

 9月15日に宇宙ステーション天宮2号が打ち上げられ、10月17日に打ち上げられた有人宇宙船神舟11号と19日にドッキングした。宇宙飛行士2名が天宮2号の中で、30日にわたり滞在し、さまざまな実験を行う予定だ。天宮宇宙ステーションは2018年以降にコアモジュールの打ち上げが始まり、2022年には完成させる予定だが、この天宮モジュールの打ち上げにも長征5号の活躍が期待されている。

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