11月3日、中国は新型ロケット「長征5号」の打ち上げに成功した(写真:ロイター/アフロ)

 11月3日夜、中国海南島・文昌宇宙発射場では長征5号の打ち上げが成功した。長征5号は、直径5メートル、全長57メートル、20階立てビルに相当する巨大運搬用ロケットで、最大25トンを運搬できる。運搬能力係数としては米ボーイング社のデルタIVに次ぐ世界2位だ。今回は通信衛星のひとつ「実践17号」を搭載した打ち上げだが、今後中国が進める天宮計画(独自宇宙ステーション建設)や嫦娥計画(月面基地建設)の資材運搬に欠かせない中国の新世代ロケットである。

 今年秋の天宮2号打ち上げ時に使用される予定だったが、最終的には天宮2号打ち上げは長征2号FT2が使われたので、今回の打ち上げが、5号の披露目となった。ネット中継で世界中のロケットファンがこの打ち上げの中継を見ただろうが、その長征5号の巨大さや性能だけでなく、打ち上げ直前にエンジンの予冷システムに問題が起きたにも関わらず、いったん燃料タンクを空にして再充填して160分の遅延だけにとどめて、再度打ち上げ体制に入った中国当局の強引なほどの情熱にも驚嘆させられたことだろう。

 中国経済がハードランディング必至といわれるなか、かくも宇宙開発に膨大な予算と情熱を示すのはなぜか。その背景と現状について整理しておきたい。

247項目の独自開発技術の塊

 長征5号について、中国公式メディアを参考にもう少し説明しておこう。研究者の間では「デブ5(胖五)」とあだ名される、直径5メートルの大型ロケットで、中国の従来の運搬ロケットの1.5倍の太さがある。推進力は従来の2.5倍、最大25トンを低軌道、14トンを静止トランスファ軌道に運搬できる。長征5号には247項目の中国独自開発新技術が使用され、中国新技術の塊と言っても過言ではない。一般にロケット開発では、打ち上げの失敗が与える損失やマイナス影響が大きいため、ここまで思い切って新技術を使用することはなく、中国としては非常の冒険的な試みだったとか。

 なかでも開発に困難を極めたのが、主要の新技術の一つ、YF-100(120トン級液体酸素ケロシンエンジン、酸素リッチ段階燃焼サイクルエンジン)だ。これは旧ソ連のRD-120を参考に開発したと言われているが、試作機の最初の4台のうち2台は爆発、2台は燃料系統が焼損するといった失敗もあった。ようやく5台目を成功させることができたあとも、燃料層壁の接合の問題などさまざまな技術的困難に直面し続けたとか。