安倍晋三・李克強の首相会談の文言も見てみよう。

 李克強の発言は以下の通り。

 「双方が両国関係を積極的な流れにもっていき、さらに一歩良好な相互作用を強化し、歴史、台湾、東シナ海などの敏感な問題をうまく処理し、両国関係をたゆまず前進させ続けるよう望む」

 「中国側は日本側と政治、経済領域の対話を行い、政策上のコミュニケーションと協調を強化し、科学技術とイノベーション、省エネ環境保護、医療老人介護、財政金融、防災と農業などの領域での協力を深め、開放、透明化、市場化の原則に従って、第三国市場における中日の実務協力の新たな支柱として打ち建てたい」

 「海空連絡メカニズムのホットラインをできるだけ早く設置し、海上執法部門の対話を強化し、東シナ海を平和と協力、友好の海にしたい」

 「両国の青年、体育、地方などの領域でお互いを鑑に交流し、双方の人的往来の利便をはかる友好的措置をとりたい」

 「目下の国際情勢のもと、中日は世界主要経済体として、多極主義と自由貿易を共に庇護し、開放型世界経済を推進していくべきだ。中日韓自由貿易区と地域経済のパートナーシップ協定(RCEP)、の交渉を加速推進させ、地域貿易投資の利便化を促進したい。東アジア経済共同体をともに建設し、アジア太平区域の一体化プロセスの助けとしよう」

 これに対し安倍晋三の発言。

 「李克強首相の5月の訪日で日中関係は正常な軌道を回復した。これを契機に、競争を協調に変える日中関係新時代が始まった。日中は重要な隣国であり、双方が戦略的パートナーで、お互い脅威とならない。中国の発展は日本にとって重要なチャンスであり、日本はハイレベルの交流を強化し、四つの政治的文書を基礎に戦略的コミュニケーションを強化し、両国の経済貿易、投資、金融、イノベーション、第三市場での協力、青少年、スポーツ、地方の各領域での協力交流強化を望む。日中が手を取り合い時代の潮流に順応することは世界が直面する共同の課題解決の助けとなろう。双方は共同の努力をしてRCEP交渉の実質的な進展を推進し、自由で公正な国際経済秩序の建設を推進し、自由貿易と世界経済の発展に貢献していくべきだ」

中国は一帯一路、日本は拉致問題で成果

 

 中国にとっての成果の一つは、安倍に一帯一路を評価させたことだろう。一帯一路戦略は中国人専門家ですら挫折説を囁く人がいたのだが、日本が関わることで息を吹き返す可能性がでてきた。党規約にまで書き入れられた一帯一路戦略が失敗となってはそれこそ政権の存続が危ぶまれかねないので、習近平としては胸をなでおろしたことだろう。ただし、日本企業が一帯一路で利益を見込めるかというと、そう簡単な話ではかろう。しかも安全保障的な観点でみると、一帯一路戦略は失敗した方が、むしろ日本の国益にかなうのではないかと、私は思っているので、この点に関しては、安倍政権の本当の狙いがよくわからないでいる。

 日本にとっての成果は、まず習近平の口から北朝鮮の拉致問題に対して「理解と支持」発言を引き出したことで、この部分は新華社記事発表の公式発言には出ていない。中国の北朝鮮に対する影響力がどれほど残っているかはわからないが、行き詰まっている拉致問題に新しいアプローチを提供してくれる可能性はあるかもしれない。