
安倍晋三首相が25日から27日にかけて訪中する。習近平政権になってから初の日本首相による公式訪中であり、苛烈な米中貿易戦争で苦戦している中国にとってこの日本首相訪中への期待は並々ならぬものがある。果たしてこの訪中を契機に日中関係はどのように変わるのか。あるいは変わらないのか。訪中直前にこれまでの日中関係の推移と今後の予測について、整理しておこう。
ちょうど私は北京にいて、この数日、体制内学者や民間研究所のアナリストにきたる日本首相7年ぶりの訪中に対する中国側の期待や見立てを聞きまわっていた。彼らの自由な発言空間を守るために、その名は出さないが、それなりに政権の内情に通じ、また政策に影響を与える立場にいる人たちである。彼らは共通して、この訪中が日中関係の新時代の始まりになることを期待している。しかも、そういう新時代の日中関係を作ることができるのは安倍政権しかないという認識である。日本人が思っている以上に中国体制内の人間の安倍政権評価は高い。ひょっとすると日本人より高いかもしれない。
とある勉強会で某大学の国際関係学教授が解説した日中関係の現状と未来についての分析がなかなか面白いので、紹介したい。
彼によると日中関係は2010年を分水嶺として四つの時期に区切ることができるという。1972年~92年を「蜜月期」、92年~2010年を「戦略的競争および合作関係期」。2010年に劇的な転換期を迎える。8月に日中のGDP規模逆転、そして尖閣諸島をめぐる日中間の問題の表面化によって、一般日本人の対中感情が極度に悪化する。2010年以降は「完全なライバル関係、競争期」。日中関係は悪化していく。2012年秋の尖閣諸島の国有化と中国国内で発生した反日暴動、2013年の首相の靖国神社参拝、2014年に谷底になったあと、2015年から少しずつ回復期に入り、今年2018年の安倍訪中によって日中関係は「新時代の日中関係期」を迎える、という。
いわく、日本は2012年に安倍政権が登場して以降、対中牽制政策をとってきた。具体的には防衛力強化、日米同盟強化、東南アジア諸国に対する経済協力を通じた中国包囲網の形成。日米豪印の民主主義大国による普遍的価値観国同士の連帯、TPPや国際海洋法など国際社会のルールを利用しつつ中国的価値観を牽制し、中国に照準を絞った国際世論戦をしかけた。その結果、中国脅威論をグローバルな世論として喚起することに成功した。
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